イネ紋枯病低抗性と稲体成分との関係を明らかにすることを目的して、強・中・弱方向へ選抜したF_9、F_<10>及びF_<11>系統とその親品種を供試し、注射器接種法による抵抗性の判定、相対澱粉含量測定法による葉鞘内澱粉含有量の測定、及び近赤外分光分析法により病斑指数及び葉鞘内成分の解析を行った。 イネ紋枯病抵抗性と葉鞘内澱粉含有量との関係については、葉身の切葉処理によって澱粉含有量は確実に減少し、抵抗性も弱まることが分かった。また、供試系統・品種の抵抗性とその葉鞘内澱粉含有量とを比較すると、ジャポニカタイプの感受性親品種に関しては、羽柴らが報告したように出穂期、葉鞘内澱粉含有量及び病斑指数の3者の間に並行関係があることが確認できたが、抵抗性が大きく異なる系統を含めて全体的にみた場合、上記の3者のいずれの間にも明確な関連性がないことが分かった。 近赤外分光分析の結果は、強・弱系統群の判別分析については、両群を数波長の吸光度によって確実に区別することはできず、稲体内の特定な成分の質及び量的な違いだけで抵抗性が決定されることはないことが分かった。また、近赤外分析によって過去の供試材料数に比べてより多くの供試材料の葉鞘内窒素含有量を推定した場合も、病斑指数と推定葉鞘内窒素含有量との間に過去2年間と同程度の相関関係が得られたことや、病斑指数に関係が深いと推定された化学構造に窒素を含むものが多かったことから、イネ紋枯病抵抗性が稲体内の窒素と密接に関連していることが分かった。しかし、病斑指数の関係が深いと推定された化学構造に他の有機構造がみられたことから、抵抗性に稲体の他の成分の関与していることも推察された。
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