鳥取大学乾燥地研究センタ-内にある砂丘とクロマツ林に調査地を設け樹木の動態を調べた。海岸汀線から約100mまでは砂丘で内陸に向かってニセアカシアそしてクロマツが分布している。この調査地で植生と樹木の稚樹の分布状況の解析を試みた。砂丘上では汀線から60〜100m地帯にイネ科の草本がまばらに分布しているがこの地帯は海からの塩風とそれにともなう砂の移動および夏季における土壌の乾燥が制限要因として作用し遷移が停滞しているとみられる。汀線から100m前後に木縁が形成されているが林縁から内陸へ200mまではニセアカシアが優占した林分であった。この地帯はかつてはクロマツ林であったが遷移にともないニセアカシアとなったと思われるがその主な要因はマツノザイセンチュウと林床の水分・養分条件の変化と推察された。かつてはこの調査地一帯は砂丘であったが約35年前クロマツが植栽されクロマツ林となったがそれにともない林床に腐植が堆積し土壌表面は水分条件が良好になりニセアカシアの定着をもたらした。さらに土壌表面の有機物の堆積は植物への恒常的養分補給を可能にしその結果初期の成長速度・耐陰性が勝っているニセアカシアがクロマツに代わり優占することになったと思われる。海岸より200m以上内陸では現在クロマツ林であるが近年マツノザイセンチュウの被害によりやや衰退しつつある。この地帯はニセアカシア帯に比べより内陸にあるため塩風が緩和され土壌が乾燥していることによりニセアカシアの定着・生育を困難にしていると考えられる。マツノザイセンチュウの被害などにより生じた林孔にクロマツ稚樹が天然更新しており今後はニセアカシアの混交したクロマツ林として維持されるであろう。クロマツの稚樹はクロマツ林帯では定着しており天然更新は林分全体としてはなされている。しかし林縁などより乾燥し腐植層の薄い箇所では更新・生長とも劣っていた。
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