Research Abstract |
1.日本では国公立の試験研究機関が稲の新品種の唯一の開発主体であった。主要農作物種子法及び種苗法の改正により,民間部門による新品種育成推進のための環境が整備され民間企業の種子産業への参入の経済的インセンティブが与えられたこと,また,バイオテクノロジ-を始めとする種苗関連の先端技術の著しい発展にともなう。稲育種に関する諸規制を一層緩和して,稲育種活動の活性化を図れば,米の種子産業の国際競争力の強化,そして米産業の国際化対応に役立つであろう。 2.米の試験研究機関と普及機関との連携をより緊密にし,稲作農民の直面する問題や新技術に関する要望をより直接的に研究者に伝達する仕組みを形成し,技術や情報のル-プをより拡大し,新技術に対する需要と供給のミス・マッチをより少なくすることが望ましい。東北,北陸,北海道等の米所では,農業団体や農民が研究費,実験設備を公立試験場に提供し,当該地域の自然条件に適合する品種の育成を促進する例も見られるようになった。農民,農業団体がより一層試験研究に関わりを持ち,農民参加型の試験研究を推進することが望ましい。 3.米過剰対策として一律減反を実施しているが,単収増加は減反面積の拡大と財政支出の増加をもたらすため,増収技術に対する社会的ニ-ズは弱くなり,増収技術の試験研究・普及も抑制された。この結果、国際的にみて日本の単収の相対的優位性はしだいに低下している。このことがアメリカと比べて日本の米生産費を割高にする一つの原因となっている。一律減反方式を見直し,増収技術を中心とする技術進歩を加速化させるような制度的,政策的な枠組みを構築することが日本の米産業の国際競争力を高めるための重要な課題といえる。
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