Research Abstract |
マングロ-ブは塩生植物の一種である、熱帯・亜熱帯の海水の出入りする感潮河川域に分布している植物群である。南西諸島(沖縄)に分布しているマングロ-ブの一種であるKandelia candel(和名:メヒルギ)の胎生種子をNaClを含む水耕栽培液を用いて人工気象条件下において栽培し、NaCl濃度と生育について比較し各種イオンの取り込みとその生育応答について検討した。 1)試料および方法:メヒル胎生種子は、1/2000aワグネルポットを用い底部より通気を行う砂耕法で人工環境調節下に栽培を行なった。栽培条件(4か月)として、人工光グロ-スキャビネット(小糸製作所製)を使用し昼間30℃、夜間25℃、12時間照明、相対湿度50ー70%に調節した。栽培後の各植物体は、葉(健全生育葉)、茎および根の3部分に分け精秤後、蒸留水とともにホモジナイズした。このホモジナイズ調整液について各種無機イオンおよび有機酸の分析を行なった。 2)結果:メヒルギ栽培試験の結果、0.6%NaCl濃度(肥料+0.6%NaCl)の生育が最も良好で節間伸長、葉の大きさも他の区に比較して優れていた。平均的な海水塩分濃度である3%NaCl区(肥料+3%NaCl)の生育は、僅かな根の形成は認められたが葉の伸長展開は非常に劣っていた。植物体内に取り込まれ蓄積されたイオンは、栽培液中のNaCl濃度上昇とともにNa^+イオン及びCl^-イオンの吸収が増加し植物体内への蓄積濃度も増加した。栽培液中のイオン組成の変化は、特に0.6%NaCl区でK^+,NO_3^-,PO_4^<3->の各イオンが減少していた。葉内のNa/K比は、栽培液中のNaCl濃度上昇とともにその値も大きくなり2.4%NaCl区では3.63であった。浸透圧調節に関連している有機酸類で葉内および根内に分布した主な有機酸としてシュウ酸とリンゴ酸が認められた。
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