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¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1991: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
細胞内カルシウムイオン(Ca)は,二次メッセンジャ-として種々の重要な細胞機能を制御する。受精卵に於ては,表層顆粒の開口分泌を誘発して複数の精子の侵入を防ぐとともに,休止していた卵を代謝的に活性化して細胞分裂をもたらす引き金として重要な機機能を果たす。Ca増加機序として細胞内Ca貯蔵部位(Caストア)からの遊離があり,イノシト-ル三リン酸(IP_3)によって誘発されるIP_3ーinduced Carelease(IICR)と,Ca自身によって誘発されるCaーinduced Ca release(CICR)が知られている。本研究では,Caストア膜上に存在するIP_3受容体に対する単クロ-ン抗体(mAb)(大阪大学蛋白研究所,御子柴教授の研究室による)がIICRを機能的にブロックするという重要な知見を得,ハムスタ-卵に於けるCa遊離機構を生理学的に解析した。予めmAbとCa指示薬fura2を卵細胞内に注入し,1〜2時間後にIP_3をマイクロピペットから電流パルスで細胞内に注入し,遊離したCaをfura2蛍光による画像解析により記録した。mAb,の一つでIP_3受容体のCaチャンネル部位附近を認識する18A10は,濃度依存性にIICRを非競合的に抑制することを明らかにした。ハムスタ-卵は受精時に精子附着部位からの伝播性のCa増加と,くり返すCa増加を示す。抗体18A10は,このCa waveとCa oscillationをともに濃度依存的にブロックすることを明らかにした。他方,Ca注入によっても伝播性のCa遊離がおこり,CICRの存在を示唆するが,これもIP_3受容体抗体でブロックされることを見出した。このように,哺乳動物卵受精には,IP_3によるCa遊離機構が一義的なメカニズムとして実際に機能しており,IP_3受容体がCa waveとCa oscillationという,空間的,時間的シグナル伝達に主要な役割を果たすことを初めて明らかにした。研究結果を論文としてまとめあげ,‘Science'誌に投稿した。
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