Research Abstract |
紫外線を主体とする光による網膜障害を明らかにするため,実験動物に短波長を中心とする光線を照射し,その変化を組織病理学的に観察した。 実験方法は,大容量のキセノンランプ(ニデックHC-550)よりの光線をフィルター(ホヤHA-30)を通して長波長をカットし,有色家兎の眼底の定めた部位だけを連続的に照射した。2時間照射直後には検眼鏡検査や蛍光眼底造影では異常は認めなかった。しかし,12時間後には蛍光眼底造影で過蛍光を認め,6日には照射部周辺部に顆粒状過蛍光を認め,13日には照射部全体に顆粒状過蛍光を認めた。組織学的には24時間後には蛍光眼底造影で過蛍光を示した部位では網膜色素上皮は扁平化し,染色性が著しく低下し,一部壊死,破壊していた。視細胞外節の配列は乱れ短縮していた。しかし,より内層の網膜には異常をみなかった。6日にはその部は網膜色素上皮は旺盛な増殖を示し,重層化していた。また視細胞外節はほぼ消失していたが,脈絡膜毛細血管には変化がみられなかった。 これらの実験の結果,短波長光線の長時間照射では網膜色素上皮がまず障害され,続いて視細胞外節が二次的に障害されることが明らかになった。この結果は平成4年度日本中部眼科学会で研究分担者の湖崎淳が口演した。 次に,短波長光線による網膜色素上皮障害の直接的な障害発生過程を明らかにするため,我々は光化学作用によるフリーラジカルの発生が関与していると考え,同様の実験動物に照射前にフリーラジカルの強力なスカベンジャーとして知られるα-トコフェロール30mg/kgを静脈投与した。α-トコフェロールを投与した例では同様の照射実験を行っても極めて軽い変化しか見られなかった。この実験により,短波長による光網膜障害の発生には光化学作用によるフリーラジカルの発生が強く関与していることが明らかとなった。この結果を平成5年度日本眼科学会総会にて発表予定である。
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