Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1991: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
LDLレセプタ-異常に基づく家族性高コレステロ-ル血症(FH)は,LDLの蓄積により高率に動脈硬化を発症する重篤な疾患でありその治療薬剤の開発に,多くの努力がなされ,近年ようやくいくつかの有効な脂質低下薬が開発されてきたが,いずれもFHの本態であるLDLレセプタ-に直接作用するものではない.我々は,あらゆる薬剤に低抗性であった家族性高コレステロ-ル血症に胆嚢癌が発症し,その直後より血清コレステロ-ルが正常値以下まで低下した症例を見いだした。本症例の腹水から採取した癌細胞の培養上清に正常者の皮膚繊維芽細胞のLDLレセプタ-を著しく増加させると共に,FHにおいても正常まで誘導する因子の存在を発見し,本細胞継代培養にも成功した(Lancet,336:1990).癌とコレステロ-ル代謝との関連に興味のある示唆を与えるこの発見を基盤にして,癌細胞の分泌するLDLレセプタ-誘導物質を生化学的手法および免疫生化学的手法を用いて同定,分離,精製を行い,それによって従来の治療法に反応しない難治性の高コレステロ-ル血症の治療に役立てる事を目的とした. 本研究において,この細胞株が分泌する因子は従来からLDLレセプタ-を誘導することが知られている,インスリン,甲状腺ホルモン,エストロジェン,ヒト絨毛性ゴナドトロピン,副腎皮質ホルモン,ACTH等のホルモンやPDGF等とは異なることが確認されたが,その分離・精製にはまだ成功しておらず,現在鋭意精製に務めているところである. 本研究遂行中に,別の症例である巨大幅腎腫瘍で血清コレステロ-ルが23mg/dl程にまで低下した症例を見いだし,外科的腫瘍摘出術の後に血清コレステロ-ルが180mg/dlと正常化した症例を経験した.本症の細胞も継代培養に成功したため,この第2例目も含めて,LDL受容体誘導因子の解明に当たっている.
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