Research Abstract |
本研究は,マラソンのように長時間にわたって運動負荷がかかる場合と野球のように運動・休息が繰り返される断続的な負荷がかかる場合の各々に要求されるスポ-ツウェア素材の性質を,環境温度との関係から明らかにすることを目的として,本年度は,高温環境と低温環境のそれぞれについて,運動が長時間行われる場合に適するスポ-ツウェア素材を人体影響の観点から明らかにした。以下に研究成果の概要を示す。 1.まずはじめに,環境温度が人体生理に及ぼす影響についての基礎的知見を得るために,夏季および冬季に冷房・暖房室内外を入退室する場合の人体皮膚温・口腔温への影響を明らかにした。また,暑熱刺激および寒冷刺激に対する人体生理の季節変化を捉えた。 2.水分特性の異なる3種のスポ-ツウェア(綿,ポリエステル,綿/吸汗性ポリエステル混紡)を用いて,発汗シミュレ-ション実験および人体着用実験を行った。その結果,高温環境(30℃)においては,スポ-ツウェア素材が心拍数,食道温に与える影響は大きく,ポリエステル着用時には人体への過負荷の大きいことがわかった。吸湿性に乏しくかつウィッキング性の小さいポリエステルは,他に比べて発汗時の熱損失量が少なく,運動によって増大した産熱を迅速に人体ー衣服系から放散できないためであることがシミュレ-ション実験から明らかとなった。 3.低温環境下(15℃)では,運動後の衣服内温度の低下を除いては,スポ-ツウェア素材の人体影響の相違は小さいことが明らかとなった。 4.近年開発された吸汗ポリエステル/綿混紡のスポ-ツウェアは,ウィッキング性が大きく,乾燥の速いことが発汗シミュレ-ション実験から明らかとなったが,人体影響については特徴的な影響は認められなかった。なお引き続き,運動が断続的に行われる場合についても,環境温度との関係から適するスポ-ツウェア素材を明白にしていきたい。
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