Research Abstract |
近年の新しい生活形態の中で基礎体力を保ち,健康で快適な環境を作り上げることは,現代人にとって不可欠なことと思われる。従って,生物の基本的な特性を理解し,食を含めた生活環境が及ぼす行動や体力等の健康に関わる影響について研究することは,極めて重要なことである。本研究では,食事の不規則と質,同居数,床面積,光のリズムと色調を選び,これらの行動や体力への影響を我々が前年度までに考案したエネルギ-代謝測定法によってラットとマウスを用いて調べた。 1。2日サイクルでの60%ト80%制限食とその不規則摂取(38日)に対するラットの適応を調べたところ,80%食には基礎体力を維持し行動量を落とすことによって適応したが,60%食には十分に適応出来ず,体重,体力,活力共に低下した。制限食での食事の不規則性の影響ははっきりしなかったが,規則摂取群のほうがやや良好であった。 2。絶食下におけるラットの行動と体力について3週間にわたって経時的変化を調ぺた。その間,一定の割合で減少したのは体重で最初の6割となった。最初急激に低下しその後徐々に低下したのは総消費エネルギ-量,BMR,RMRで各々当初の4割となった。最初急低下しその後一定かやや増加したものに活動量,活力,活動負担度,情動性があった。RQは0.7に低下し最後に上昇した。 3。高炭水化物食,高蛋白質食,高脂肪食についてもラットで2週間にわたり同様に調べたところ,高炭水化物食で活動量が増加し高脂肪食で最も低い傾向にあった。 4。最後の生活環境に関する実験では,マウスを用いた。まず,同居数については,1匹飼育群と6匹飼育群に分けたが,6匹群で摂食量が低下しそれに見合って体重が減少した。1匹当りの活動量や活発さも顕著に低下しおとなしくなっているようで,長期的には体力的な低下も心配された。次に,床面積に関する実験では,狭いケ-ジ群で摂食量が少ないのに体重は重くなる傾向が観察された。狭いケ-ジでは,活動範囲が小さく,活動量が押さえられ,活力はもちろん体力も低下していた。また,活発さも低下傾向で大変おとなしくなっているものと思われた。光と色の実験では,1週間目では5群間に大きな差がなく,2週間目では,24時間暗期群と24時間赤色群はコントロ-ル群である明暗12時間群とほぼ変わらない結果であったのに対して,24時間明期群と24時間青色群では活動の日内リズムが崩れ,体重も低下していた。夜行性であるラットにとって,青色は明色と感じられ,24時間光を照射された状況では,活動が制限され,活力も低下したものと推定された。 5。今後の問題として,個々の実験の詳細な条件設定が必要で,その他温度,運動等の影響も検討に値する。
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