Research Abstract |
生体高分子の構造研究の手段としてNMR法は強力な手段であるが,対象とする分子量が大きくなるにつれ,有効な測定手法は限られる。本研究は新しい測定手段を提供するための基礎研究である。 緩和誘起型3量子遷移法は蛋白質のメチル基を選択的に抽出する手段として有効であると思われる。3量子の遷移を測定する方法として,縦緩和型は横緩和型に比べて,感展では劣るが,スピン結合による遷移成分を除くのが容易であると予想された。実際には,縦緩和型はパルスの調節は容易であるが,スピン結合の寄与を完全に除くことは困難であることが分かった。1次元スペクトルの測定は分子量数万程度のものは期待された緩和曲線を描き,測定はそれ程難しくないことが分った。しかし測定感度は通常測定の約0,5%と異常に悪かった。その原因を追求した話果,使用したNMR分光器の性能に問題が数多くあることが分った。まずパルス波形の乱れや,パルスの位相制御精度がこの測定を行うには十分でないことが分かった。次に装置の感度を上げるために,同調回路が非常に鋭く設計されているが,温度の揺らぎなどが位相やパルス角度の変化となって悪影響を与えることがわかった。使用した装置では温度の揺らぎが0,5°程度位相のふらつきが5°程度あることが推定され,1量子遷移や2量子遷移成分の消去を非常に困難にしていた。 位相精度は2量子遷移の測定では上記測定ほど厳しく要求されないので,異種核相関2量子遷移スぺクトル法の予備的検討を行ない,極めて有望な結果を得た。さらにホモスポイル選択励起2次元スペクトル法を検討し,この方法で不可避的に混入する渦電流の影響をソフトウェアで除去する方法を見出した。この方法は勾配磁場強調スペクトル法への道を開くものと期待される。
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