Research Abstract |
監査基準の改正にあたって,最も問題になるのがEffectivenessとEfficiencyである。88年に改正されたアメリカ監査基準書(SAS)では,Efficiencyの規定がSAS55号として初めて組み込まれた。我が国におけるSAS55号の研究はJournal of Accountancyの掲載された論文と最終規定のみを中心として行われてきた。これら英文論文は監査基準審議会(15名の委員から構成)の委員であり,しかもSAS55号の公表に対して賛成した論者が執筆していることに注意しなければならない。さらに,委員の中でも大手会計事務所選出の委員5名と学会選出の委員は反対していることに注意しなければならない。本研究では、SAS55号を正しく評価するために,各種資料を使用して分析を加えた。 1 SAS55号は旧規定を廃止するものであり,旧規定と公開草案(ED)との比較を試みた。EDは従来の考え方と別の思考(Assertions,Audit Risk)を基礎にして構築されている。そのため,未だ研究していないSAS31号のAssertionsの考え方を分析の準備段階として行った。そして,旧規定とEDとの差異を中心的に分析した。 2 SASは関係者からの意見を取り入れて公表される。したがって,関係者からの意見,例えば学界人からの意見(kinney,Wallace,Carmicheal)や大手会計事務所の意見を分析した。特に学界ではSAS55号に対しては議論が多い。 3 最終規定の分析を行った。その過程で,EDは旧規定の色々な部分を組み込み,Cont rol Riskの査定規定に関してはEDの文章が書き改められていることが判明した。 4 既に指摘したように,SAS55号の実務への適用に関しては色々な意見があった。そのため,実務指針としてAndit Guideが公表されたが,その公式文書についてもSAS55と同様の分析を行った。 上で指摘したように,SAS55号は研究すべき領域が多く研究成果の公表は申請時点での予想に反して遅れている。
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