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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1991: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
まず高反応性有機スズ化合物の速度論的安定化の第一段階として、立体保護基として用いる2,4,6ートリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル基(Ar基)に含スズ官能基を導入するため、ArBrから容易に調製が可能なArLiに対し求電子試薬としてSnCl_4を作用させることでArSnCl_3を安定な結晶として合成した。また、ArLiとSnCl_2との反応も検討し、溶液中に生成したArSnClに対し、さらにTipLi(Tip=2,4,6ートリイソプロピルフェニル基)を作用させることでこれまでに報告例のない溶液中室温でも安定なジアル-ルスタニレンであるAr(Tip)Sn:を合成することができた。 次に、スズ-カルコゲン二重結合化合物の合成の前駆体として、まず得られたArSnCl_3からさらに官能基変換を行いジヒドロスタナンAr(R)SnH_2に導いた後,これと単体硫黄あるいはセレンとの反応によりスズを含む新規な環状ポリカルコゲニド(Ar(R)SnY_4;Y=S,Se)を安定に合成単離し、これらの特異な分子構造をX線結晶解析により明らかにすることができた。次いで得られた環状ポリカルコゲニドの熱、光或はリン試剤等による脱カルコゲン化反応を種々検討したところ、目的とするスズ-カルコゲン二重結合化合物であるスタナンチオン(Ar(R)Sn=S)やスタナチオスルフィン(Ar(R)Sn=S=S)及びそのセレン類似体の生成に成功した。 一方、先に合成した安定なジアリ-ルスタニレンであるAr(Tip)Sn:を基質に用い、これにカルコゲン源としてエピスルフィド及びエピセレニドを反応させたところ、この手法によってもスタナンチオン(Ar(Tip)Sn=s)及びスタナンセロン(Ar(Tip)Sn=Se)が得られることを見出した。 得られた新規な有機スズ化合物については、各種スペクトルの測定によりその性質を詳細に検討するとともに、その不飽和結合の特異な反応性を利用した様々な付加環化反応を行い、これまでに合成単離例のない1,3ージチアー2ースタネタンー4ーチオン、1,2ーチアスタネト、及び1,2ーセレナスタネト等のスズ及びカルコゲン元素を含む新規な高歪み複素小員環化合物を多数合成することに成功した。
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