Research Abstract |
日本ザルにマイクロコンピュ-タを用いて追跡眼球運動の訓練をした。これはブラウン管上に水平方向をサイン波(0.33Hz,20°)で移動する緑色の光点を出し、この光点の色が短時間赤色に変わった時、サルがテコを押すと一滴のジュ-スを与えることによって行なった。サルの頭部の固定には、新たに開発した慢性実験用脳定位固定装置(成茂,SHー50)を用い、眼位の測定にはEOGまたはサ-チコイルを用いた。訓練の完成したサルに種々の薬物を全身投与又は脳内微量注入し、その追跡眼球運動への効果を調べた。この結果以下の所見を見出した。 1.中枢ノルアドレナリン系活動を亢進させる薬理学的操作、すなわち、メタンフエタミン、エヘスドリン,ヨヒンビンの全身投与又は,ヨヒンビンの青斑核内への微量注入はいずれも、不必要な衝動性眼球運動の混入(saccadic intrusion)を増加させた。 2.中枢ノルアドレナリン系活動を低下させる薬理学的操作、すなわち、クロ-ニジン、ペントバルビタ-ルの全身投与又は,クロ-ニジンや6ーハイドロキシド-パミンの青斑核内微量注入はいずれも、滑動的追跡眼球運動の不能と段階状波または短形波による追跡(saccadic smooth pursuit)をもたらした。saccdic intrusionとsaccadic smooth pursuitの違いは、前者のsaccadeはほとんど常に目標位より行き過ぎがあり、後戻りを必要とするのに対して、後者では行き過ぎが無い点にある。 我々は過去の研究で、分裂病に特微的な皮膚電気反応の異常,すなわち馴化障害と無反応はいずれも中枢ノルアドレナリン系の過活動及び低活動によって再現出来ることを見出したが,今回の研究により分裂病に特微的とされる追跡眼球運動の2つの異常所見も中枢ノルアドレナリン系の異常により説明が可能となった。
|