Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は主にラフパス理論とよばれる新分野について研究した。これは、約10年まえにT.Lyonsにより創始されたもので、常微分方程式の概念を拡張することにより、確率微分方程式を非ランダム化してしまう理論である。有限次元の場合などを含め、主要な場合は確率微分方程式と守備範囲が重なっているが、正確には、守備範囲がややずれている。たとえば、無限次元のバナッハ空間上ではラフパス理論は問題なく働くものの、確率微分方程式は一般にはうまくいかないことが知られている。私が今回研究したループ空間上の確率過程というのはまさにそういった例になっており、ラフパス理論を持ち出す必然性があると言える。なお、具体的な無限次元の確率過程にラフパス理論を適用したのは、私(と共著者)の研究が初めてであり、ある種の方向性を示したと言えると思う。より具体的な研究内容は、ラフパス理諭の枠組みの中で、大偏差原理やその精密化であるラプラスの方法などを示したことである。なおこの種の極限定理は確率論では、非常に有名であり、いわば「定番」である。特にラプラスの方法は、ラフパス理論の中でははじめて証明されたように思う。今回計算したのは、極限の最初の項だけであるが、現在は任意有限個の漸近展開を求めるべく努力中である。特に、具体例としてループ空間の場合では、この研究によりFang-Zbangによるループ群の場合の結果が極めて簡単に別証明できる上に、はるかに一般の場合にまで拡張できることがわかった。ラプラスの方法に関しては、ループ空間上では自明な場合を除けば、初めての結果であるように思う。なお、ラプラスの方法の証明中で重要な役割をはたす確率テーラー展開が、非常に重要であることがわかった。今回は大変原始的な形でしか証明していないが、この確率テーラー展開を一般的な形でまとめることが、この次の課題である。確率微分方程式の場合では、確率テーラー展開もウィーナー測度という測度の選び方に依存しているが、ラプラスの方法では完全に非ランダムに(確率)テーラー展開を証明できるために、きれいにまとめることはかなり重要であるように思う。
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J.London Math.Soc. (In press)
J.Funct.Anal. (In press)
Osaka J.Math. 42号(In press)
Infin.Dimens.Anal.Quantum Probab.Relat.Top. 7
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J.Funct.Anal. 211
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J.Math.Pures Appl.(9) 83(no.5)
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in Osaka J.Math. (In press)(To appear)