Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は、米国公文書館に所蔵されているインディアン局の公文書の分析を行い、その活動をまとめた。今年度の特別研究員奨励費は、主に研究成果公刊に向けての打合せや、共同研究のための旅費や図書購入等にあてられた。日系アメリカ人強制収容政策の決定に際して、その一翼を担っていたインディアン局幹部の書簡を確認することにより、以下のことが明確になった。まず第一に、かれらは、先住民への抑圧と日系アメリカ人強制収容問題とを、別々のエスニック・マイノリティ集団の問題ととらえるのではなく、むしろアメリカ社会に存在する普遍的な問題としてとらえていたことが明らかとなった。つまり、それは白人社会への同化思想批判であり、少数派民族の文化を規制するべきでないという方針である。かれらは先住民の悲劇的な体験を繰り返してはならないと強く主張し、その教訓が日系アメリカ人強制収容政策にいかされるべきであると考えた。たとえば、収容所内における日本語や宗教、日本的活動の無規制などに、その方針は現れている。また、インディアン局は、被収容者の一般社会への復活を最重要事項と考え、収容された日系アメリカ人を局内職員として積極的に雇用し、一般社会への復活を図った。もちろんのこと、このような方針を打ち出したインディアン局には、世論や議会から激しい批判が向けられた。周知の通り、日系アメリカ人強制収容問題は、日系アメリカ人に大変な犠牲と苦悩をもたらした。その一方で、これらの調査結果は、担当行政官がこの問題にアメリカンデモクラシーの危機を鋭く感得し、行動していたことを示すものである。