Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
伊勢国文禄期太閤検地は、分付記載と異なり、名請人が並列記載される一地複作人制が採られたことが昨年度までの分析により確認できる。しかしこの特徴は、太閤検地研究では最も原則として考えられる一地一作人制に反する原則である。特に伊勢国検地は、研究史では完成された太閤検地と位置づけられるだけに、この理由及びこの検地で把握された名請人の階層理解は、太閤検地全体を考える上で重要である。そこで本年度は、第一に伊勢国太閤検地を通じての太閤検地原則の見直し作業を行い、第二に、江戸期の検地帳もしくは宗門帳との比較検討に基づく把握された名請人階層を検討した。伊勢国では、文禄以外に天正15年(1587)の太閤検地帳が遺されるが、ここにも一地並列複数名請人が確認できる。また、現在全国の太閤検地帳の確認作業中であるが、そこでは文禄期和泉国もしくは慶長期越前国・紀伊国の検地帳で同様の例が確認できる。以上より、太閤検地は地域・時期にかかわらず、一地複作人制を採用しており、一耕作地に単元的な権利を与えて把握するという原則はなかった可能性が高いことが確認できる。続いて、伊勢国一志郡川原木造村を元に文禄期と元禄期検地帳の比較検討を行った。これによると、文禄期に1反を超える大きな面積で把握された耕作地の多くは10〜20人以上の名請人に分割され、また検地帳記載総人数も5倍まで増加している。また、度会郡崎村の検地帳と寛永期の宗門帳の把握人員の比較結果もおおよそ5倍となる大幅な人員の増加が確認できる。これらから、太閤検地時に詳細な人員把握に基づく耕作地の詳細把握が徹底されていなかったことを確認した。上記2点の分析結果から、太閤検地の主たる目的は、名請人把握ではなく、村単位での把握・村内の年貢高・総面積把握と考えられ、太閤検地原則の見直し作業が必要であることが確認できた。以上が本年度の研究成果である。
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織豊期研究 第7号
Pages: 20-37
40007169495
小牧・長久手の戦いの構造-戦場論 上-(藤田達生編)
Pages: 89-132
文部科学省平成13年度基盤研究(A)「近世成立期の大規模戦争と幕藩体制-占領・国分・仕置の視点から-」(研究代表者:藤田達生)報告書 (印刷中)
歴史の理論と教育 第117号
Pages: 23-33
40006379039
日本歴史 第677号
Pages: 118-120