Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
最終年度となる今年度は、過去二年間に行った現地調査の取りまとめに専念した。インド国ビハール州の三県(ポジョプール県、マデプラ県、バガルプール県)で行った現地調査は、「アイデンティティの政治」台頭をめぐる三つの局面、すなわち宗教アイデンティティ、カースト・アイデンティティ、階級アイデンティティの政治争点化が典型的に起こった場所での調査であり、これらの事例研究を、独立後のインド政治全体の文脈でどのように位置づけ、解釈したらよいか、という点に関心を注いできた。そのため、内外の二次文献を収集することはもちろん、アジア経済研究所などに出張を行って、マイクロ資料や統計資料などの一次文献、新聞、雑誌記事などの収集に務めた。同時に成果の進捗状況を、所属機関内で定期的に行われる研究会で発表し、参加者の批判を仰ぎながら公表へ向けて着々と準備を進めてきた。かなり書き進み、残念ながら現時点(2006年3月下旬)では成果を公刊するに至ってはいないものの、来年度早々には形にする予定である。議論の焦点を簡単に紹介しておくと、インド政治における政党システムの変化は三つの段階を経てきたと考えることができるが、本研究で扱う第二期から第三期の変わり目にアイデンティティの政治が噴出し、暴動の時代が訪れた。両者の関係、すなわち政治変動と暴動・暴力がどのような関係に立つか、なぜ両者が重なるのか、というリサーチ・クエスチョンを立て、仮説の検証を行っている。なるべく早期に成果を形にすることが今後の課題である。(了)