Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定方 正毅 東京大学, 工学部, 教授 (30011175)
坂本 充 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (30022536)
小倉 紀雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (30015127)
武田 和義 岡山大学, 資源生物科学研究所, 教授 (90003516)
但野 利秋 北海道大学, 農学部, 教授 (40001440)
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Research Abstract |
黄河・海河・淮河の氾濫原からなる中国・三河平原は年間降水量が400〜500mmの半乾燥地帯にあって,古来から中国の重要な畑作農業地帯を形成し多くの人口を扶養してきた。しかし、増大し続ける人口圧と頻発する干ばつのために,過度の農地の開発と不適切な灌漑・水管理が強行されており、次第にこの地帯の生態系が崩壊し始めており、随所に土壌塩類化・荒廃が顕在化と始めている事実を確認した。とくに,本地域の水利用には困難で大きな問題があった。即ち、年間降水量の75〜80%は7月上旬〜9月上旬の2か月間に集中し、そのため、この期間の時間降雨強度は強く,60mm/時間を記録した。この強い時間降雨は平坦で海抜10mにも満たない本地域では降雨後も4〜5日にわたって、停滞水が地表に生じ、ゴマ,トウモロコシを中心に多くの作物に湿害をもたらした。一方、降雨が期待できない期間はもっぱら地下水の汲み上げによる灌漑が行なわれるが,強度の汲み上げは地下水位面を下げ、土壌の過乾を促進し、干ばつを誘起するほかに,地下水位が15m以下になると,塩分濃度が急激に高まることが井戸水の水質分析から明らかになった。このように,本地域は降雨期に集中する降水量を有効に貯水し、灌漑期にそれを分配する水管理方法が早急に確立されなければならないと考えられた。この他に,本年度は本地域の塩類土壌の分布を把握し、地下水位と土壌塩類濃度との関係を定量的に把握した。また,作物の生育量に影響する因子と因子ごとに検討し、因子の影響を数値化し、多因子解析ができる新しい解析法の開発を進めた。さらに,土壌中における塩類の挙動解析をシミュレ-トできるライシメ-タ-の建設,塩害と湿害を軽減するための新しい栽培技術の開発を行うための圃場の設営を行った。耐塩性作物を中心に品種の導入を行い,その評価を行うための圃場設営の準備を進める一方、新しい水資源開発のための太陽熱利用による蒸留水製造装置ならびに雨水ハ-ベスティングの貯水槽の建設などを行った。 一方、酸性雨・大気汚染のグル-プは,重慶市南山地区を中心に酸性雨の化学成分,大気汚染物質の実態,酸性雨の湖沼生態系への影響、酸性雨の森林生態系への影響,酸性雨の土壌生態系への影響についての各調査研究を開始した。また同時に,重慶市の電力の90%以上を供給している重慶発電所で使用している石炭(硫黄分4%,灰分20%)から硫黄分を除去すめための大気汚染物質の発生源対策に関し、具体的検討を行うためのモデル試験に入った。石炭を燃焼させることにより大気汚染物質は森林樹木,とくにマツ,スギ、落葉樹に対して影響が強く現われており、その原因物質が主として石炭燃焼に由来するSO_2にあることが明らかになった。本年度は以上の他に塩性土壌ならびに酸性雨に関する国際シンポジウムを1991年9月26日〜28日にわたって、東京府中市の府中の森芸術劇場で行われた。外国人参加者21名(国内留学または研修生含まず),日本人123名(外国人留学生・研修生含む)計144名を得て、21課題(キ-ノ-ト報告含む)の報告があり、きわめて盛会であった。
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