Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那須野 悟 九州工業大学, 工学部, 講師 (90228073)
CHATE Huges 原子力研究所(フランス), CNRS研究員
佐藤 信一 静岡大学, 教養部, 助教授 (30196240)
早川 美徳 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (20218556)
金子 邦彦 東京大学, 教養学部, 助教授 (30177513)
POMEAU Yves エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
BENSIMON Dav エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
PERRIN Berna エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
TABELING Pat エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
COULLET Pier ニース大学, 教授
COUDER Yves エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
佐野 雅己 (佐野 雅巳) 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (40150263)
佐々 真一 京都大学, 理学部, 助手 (30235238)
蔵本 由紀 京都大学, 理学部, 教授 (40037247)
HUGHES Chate サクレイ国立研究所, CNRS研究員
DAVID Bensim エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
PATRICK Tabe エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
VINCENT Croq エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
YVES Couder エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
PIERRE Coull ニース大学, 教授
BERNARD Perr エコールノルマル, スペリウール, CNRS研究員
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Budget Amount *help |
¥9,700,000 (Direct Cost: ¥9,700,000)
Fiscal Year 1993: ¥5,400,000 (Direct Cost: ¥5,400,000)
Fiscal Year 1992: ¥4,300,000 (Direct Cost: ¥4,300,000)
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Research Abstract |
平成5年度は、前年度の研究成果を踏まえて共同研究を展開し、研究者の派遣、招聘を行なった。具体的には、(1)G-L方程式のホール解の安定性、(2)位相界面の複雑な運動の解明、(3)時空カオスによって乱れたパターンの平均化によって現われる秩序構造の研究、(4)大域結合振動子系の集団カオス、(5)亀裂の特異点力学の解明、(6)乱流における新しい転移の研究、(7)生体の形態形成過程における細胞移動のダイナミクスなど多岐のテーマに亘って研究を展開し、時空カオスの問題解決に大きな進展を得るとともに、将来に向けたテーマの発展の方向を指し示す成果が得られた。 (1)のG-L方程式のホール解の安定性に関しては、前年度Chateが日本を訪問した際の蔵本、佐々、坂口等との議論を踏まえて安定性解析が行なわれ、1次元における時空カオスの発生機構との関連を明らかにした。 (2)の位相界面の複雑な運動の解明に関しては、Coulletの理論に基づいて日本側で佐野等が液晶対流の実験系を用いてパラメトリック共鳴下における位相界面の運動を調べ、那須野等が回転磁場下のネマティック液晶の実験系で位相界面の運動を調べ、ともに静止したIsing type wallと、運動するBloch type wallの2種の界面が存在することを実験的に明らかにした。また、日本側の理論グループ(水口、佐々)も界面の運動に関して新たな現象を見いだした。これらの過程において、Coulletを日本に招聘し詳細な議論を行ない、理論と実験の比較から2次元の時空カオスで位相界面の果たす役割を明らかにした。 (3)佐々がフランスにChate,Mannevilleを訪問し、時空カオスによって乱れたパターンの平均化によって現われる秩序構造の理論について共同研究を行なった。この結果は、今後モデル化を推し進めることにより、実験にフィードバックされると考えられる。 (4)大域結合振動子系の集団カオスに関しては、金子が大域結合写像、蔵本等が大域結合したG-L方程式系、Chate等が高次元のセルオートマトンを用いて集団振動や集団カオスの現象をそれぞれ独立に発見した。蔵本がフランスにChate,Mannevilleを訪問しモデルとメカニズムの共通生と相違について詳細な議論を行なった。 (5)亀裂の特異点力学の解明;佐野等が準静的なDirectional Crackの実験を立ち上げることにより、進行亀裂の振動不安定や分岐現象の問題を新たに呈示した。佐々、関本はこれに対して亀裂特異点の運動を記述する理論を提案し、田口、早川等は現象を良く再現するバネモデルを提案した。Couderを日本に招聘し、共同研究により多数亀裂が相互作用する場合の波数(間隔)選択の実験を行なった。同時にフランス側でもHeslot,Perrinが同様の実験を大規模化して開始した。これらの研究の成果は、Heslotを招聘した際に、研究会を催し、日本側の理論、実験、モデルとフランス側の実験を一堂に集めて密度の高い議論を行なった。 (6)乱流における新しい転移の研究;時空カオスの発達した極限としての乱流に新状態を見いだすことができるかという問題意識に基づいて、フランス側ではTabeling等が低温ヘリウム気体の回転流を用いて実験室規模では世界最高強度の乱流状態を作り出し、精密で詳細な測定を開始した。日本側では、佐野等が水銀を用いてこれまで殆ど実験がなされていなかった低プラントル数流体の熱乱流の実験を行ない、新状態を探索した。Tabelingを日本に招聘し、両者の実験について比較検討を行ない、今後の方向性について議論した。 (7)生体の形態形成過程における細胞移動のダイナミクス;澤田等がヒドラの乖離細胞集合体を用い、再生過程の差次粘着性に基づく細胞移動を実験的に調べ、Glazier,Graner等がモデルの数値計算を行なった。澤田がフランスを訪問した際、実験とモデルの整合性について詳細な議論を行なうとともに、レズ-シュの国際会議に於てその成果を発表した。Bensimonを日本に招聘し、細胞小胞の形態変化の力学などについて意見を交わした。 以上のように、本研究の成果は流体系、破壊、粉体、生体系など多岐にわたる分野の実験と関連しておりここで得られた知見の与える影響は大きい。また、その方法論に関しても、変数縮約理論に基づく偏微分方程式系、結合写像系、セルオートマトン、特異点力学など従来の理論を進めたものから新しい方法まで様々の方法の進展がはかられた。このように実験と理論の緊密な協力により、これら現象に共通した側面であるパターン形成および時空カオスの機構と規則性に関する理解を大きく進展させ、今後の新たな展開の方向を指し示すことができた。
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