Project/Area Number |
04044181
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | Joint Research |
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
沢田 正昭 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (20000490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 午憙 湖厳美術館, 室長
李 相洙 韓国国立中央博物館, 研究士
李 昶根 文化財管理局, 木浦海洋遺物保存処理所, 所長
安 喜均 韓国文化財管理局, 文化財研究所, 学芸研究士
金 東賢 韓国文化財管理局, 文化財研究所, 室長
高妻 洋成 京都芸術短期大学, 専任講師 (80234699)
成瀬 正和 宮内庁正倉院事務所, 保存課, 主任研究員
村上 隆 奈良国立文化財研, 埋蔵文化財センター, 主任研究官 (00192774)
肥塚 隆保 奈良国立文化財研, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (10099955)
工楽 善通 奈良国立文化財研究所, 飛鳥資料館, 室長 (00000472)
永嶋 正春 国立歴史民俗博物館, 情報資料部, 助教授 (50164421)
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Project Period (FY) |
1992 – 1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥8,400,000 (Direct Cost: ¥8,400,000)
Fiscal Year 1993: ¥4,700,000 (Direct Cost: ¥4,700,000)
Fiscal Year 1992: ¥3,700,000 (Direct Cost: ¥3,700,000)
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Keywords | 材質技法 / 銅金銅製品 / 漆塗り / 経年変化 / 考古遺物 |
Research Abstract |
日本国内で発見される考古遺物は、大陸から舶載されたものであったり、あるいは製作技術のみが伝播したものである。なかには、製品の材料そのものが日本に輸入され、日本で製作された遺物もあるといわれている。こうした考古遺物の材質分析やその製作技術に関する比較研究をおこなった。 分析に際しては、大半の遺物がすでに劣化しているために遺物本来の分析値が得られないという欠点があった。しかも、その劣化状態はいちようではなく、出土地の違いによっても大きな差が生じる可能性がある。しかしながら、わが国と韓国の気候・風土はきわめてよく似ており、遺物の埋蔵環境も類似し、遺物の劣化状況には共通するところが多い。そのため、青銅器の材質分析に際してもさびの状態を正確に把握し、さびの分析値への影響を考慮することによって、分析精度を高めることができる。分析方法は、蛍光X線分析、X線回折分析法を中心とした非破壊方法であった。また、必要に応じてマイクロアナライザーを併用した。 本研究は、両国間の考古遺物の材質や製作技術に関する研究のみならず、遺物の保存処理効果の評価のための情報を提供することも目的とした。金属器・陶磁器の材質と産地、木材の組織、ならびに保存法の検討、漆製品の製作技法とその保存法の検討、さらには各種顔料の分析、ガラス製品の分析などを主な項目として掲げ、両国にまたがる各種の資料を可能な限り数多く収集することにつとめた。 青銅器に関しては、銅成分に対する錫・鉛の含有量比に着目して測定し、さらに微量成分の銀・砒素・亜鉛・鉄の含有量を検討した。なお、今回の資料調査中で、韓国における金製品の出土量がわが国の比ではないことをあらためて認識させられた。 漆製品も本研究の重要な分析の対象とした。つまり、漆製品の断面の薄片を作成し、顕微鏡的な観察をもとに漆塗りの技術や材料に関する比較を試みた。現在までに、両国で出土した資料を合わせて約100点の出土品について、薄片を作成し、顕微鏡観察と使用材料の分析をおこなった。ベンガラや朱などの赤色顔料の分析、漆塗り重ねの回数、下地の挟雑物の材質などについて、両者に共通する部分が非常に多いことがわかった。しかも、その製作技法には明らかな時代的ズレが認められ、大陸からのこの種の技術の伝播経路を研究する上で有益な資料を得ることができた。時代別に技法の分類をおこなうと、韓国の古墳時代にみられた技法が、日本では8世紀に見られるなど、一時代遅れてその製品を日本でみることができる。たとえば、椀のように木胎に漆を塗る場合、漆膜をごく薄く塗る特徴がいち時代を画しているが、それは中国では戦国時代に、日本では弥生時代にみられるのである。また、漆の下地に動物の骨を焼いて粉砕(骨粉)し、これを漆に混ぜて使用する例は、中国では漢代の製品から数多くみられ、韓国では7世紀の製品に骨粉の使用が確認された。そして、わが国では奈良時代の製品に同じ技法が確認された。 各種の文化財にはごく普通に顔料が使われている。その種類と変遷を解明することによって、彩色文化財の後補部分の判別、色調の変化や退色、遺物の真贋の判定などに提供できる情報を集積できた。また、本研究では韓国における保存科学関連の文献目録を初めて作成することができた。埋蔵文化財、建築、工芸、美術品など自然科学的手法による分析調査、保存処理などに関する研究報告、論文、著書など、740件を網羅している。 今後の課題としては、金属製遺物の分析調査ではもっと資料数を増やしたうえで、器種や製作時代ごとに分析値との分類比較を試みる必要がある。また、金銅製品では、鍍金層における金成分の分布形態や鍍金を施した際の、水銀の残留状況などから鍍金技術をアプローチしていきたい。また、出土木材の保存処理方法ではPEG含浸法が主流であり、両国でも盛んに実施されているが、その歴史は互いに浅く、今後の継続的な経年変化の観察が必要である。特に、木材内部におけるPEGの凝固時の形態変化などの基礎的な調査にもとずく経年変化の必要性を痛感している。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)