Budget Amount *help |
¥3,800,000 (Direct Cost: ¥3,800,000)
Fiscal Year 1992: ¥3,800,000 (Direct Cost: ¥3,800,000)
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Research Abstract |
血清飢餓や接触阻止により増殖サイクルを離脱した細胞は,血清や細胞増殖因子で刺激すると速やかに前初期遺伝子群を発現し細胞複製を再開する。前初期遺伝子群のなかで,fos,junは癌原性を持つことから細胞増殖を促進的に制御すると考えられる。fosB遺伝子産物の1つであるΔFosBはAP-1(Fos/Jun)複合体の転写制御能を抑えるにもかかわらず細胞をトランスフォームすることから,細胞増殖制御における転写制御の役割を考える上で非常に興味深い。ΔFosBと細胞増殖そして転写調節の関係を明らかにする目的で、ΔFosBをエストロジェンレセプターとの融合タンパク質(ER-ΔFosB)として発現させ,ΔFosBの機能をエステロジェン依存性にコントロールできる系を構築した。ER-ΔFosBを発現するRat-1A細胞を接触阻止及び血清飢餓により休止期に同調し,これをエストロジェンで処理すると,ER-ΔFosBの活性化にともないDNA複製が同調して開始し1回の核分裂と細胞分裂を完了する。この系ではほとんどのAP-1がERΔFosB/Jun複合体となっており、ΔFosB依存性に細胞増殖が制御されている。休止期の細胞が増殖を開始する際に機能するFos,Junの標的遺伝子を同定する目的で、この系を用いてエストロジェン処理により発現が変化する遺伝子を検索した。ER-ΔFosBにより複製を開始した細胞においては,jun,fos遺伝子群の中で唯一fra-1の誘導が見られ,また血清刺激により複製を開始した細胞とほぼ同様のタイムコースで細胞周期制御の中心的な遺伝子であるcdk2,cdc2,サイクリンA,B1,B2,Eの発現が誘導された。これらの結果より,細胞周期制御遺伝子群の統括的な発現制御機構の存在が示唆され,ΔFosBはこの制御機構の上流に位置し細胞複製を制御すると考えられる。
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