Research Abstract |
1991年9月27日に九州北部に上陸した台風19号は,日本海西部を北上し北海道に再上陸したが,西日本を中心に農業,林業に未曽有の被害をもたらした.今回の台風の特徴は,(1)日本海沿岸を北東進したため,日本全体が台風の東側(危険半円側)に位置したこと,(2)しかも高速で進行して北海道まで低い中心気圧を維持したこと,(3)そのため各地で過去に観測しなかった強風が吹いたことである.また農林災害の特徴は(1)被害が南は鹿児島県から北は青森県までほぼ全国的に発生していること,(2)したがって被害面積,被害額は過去の台風災害に比較して非常に大きいこと,(3)リンゴ,ミカンなどの果樹被害が著しいことである.今回の台風による全国の農作物の被害面積は,約768,600ha,におよび被害金額は327,900,000千円(1991年12月現在)におよんでいる.面積的に最も多いのは水稲で479,500haであるが,金額的には果樹で211,600,000千円である.西日本(九州,中国,四国)の農林被害の特徴は,水稲,果樹,ハウスの被害が多く,被害総額では熊本県が最も多かった.九州7県の農業被害の最も著しかったのは水稲で,ついで野菜,果樹の順となっている.これらの被害は台風の進路上や進路の南側100km内に位置した福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県である.東北地方の最大の被害は青森県のリンゴの被害であった.リンゴは全国生産の50%が青森県で栽培されており,その70%が被害を受けた.林業被害は全国で1,000万m^3にもおよんだ.そのうち九州の北中部が80%をしめ,3万ha,800万m^3,1,500万本にも及んだ.被害はスギ,ヒノキの人工林が主で5-6歳林の被害が大きい.この被害地はたいふうの進行にほぼ平行に中心から約50-100kmの帯状の地帯に甚大な被害をもたらしている.地形的に500-1050m標高のところに被害が分布しているが,600-650mに全被害の34%が集中している.
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