Research Abstract |
(1)単量項結晶場効果と近藤効果の競合 ある種のウラニウム化合物では,f電子の結晶場単重項が基底状態になっている。本研究では,結晶場単重項と近藤単重項の安定性の競合をスケーリング理論によって調べた。繰り込まれた交換相互作用に対するスケーリングの方程式を数値的に解き,交換相互作用にあるしきい値があり,しきい値以下では結晶場単重項が基底状態になるが,しきい値以上では,繰り込みの過程で交換相互作用が発散することを示した。しきい値付近の交換相互作用の場合には,競合によって新しいエネルギー尺度が生じ,結晶場分裂と近藤温度のどちらよりも非常に小さくなり得ることを指摘した。これらの結果は,国際会議で公表された。 (2)銅酸化物系 4スピン相互作用の効果を詳細に調べた。そのために,微視的な計算から得られている値(最近接相互作用の1/4程度)だけでなく,4スピン相互作用の種々の大きさに対してラマン・スペクトルと基底状態に及ぼす効果を調べた。これらの結果のあるものは既に和文の報告としてすでに出版され,英文報告は出版論文として掲載可となり,印刷中である。 (3)長距離相互作用を持つ1次元超対称t-J模型 前年度までに,新しい厳密解が可能なモデルとして超対称t-Jモデルを提出し,いわゆるGutzwiller波動関数が固有関数になっていることを解析的に証明した。また計算物理的手法の新しい展開として,変分モンテカルロ法における揺らぎの欠如を,厳密な励起状態の判定条件に用いた。本年度の研究では,磁化と流れが有限の励起状態を変分モンテカルロ法で広範に調べ,またその結果の分析を解析的な手法を用いて行なった。更に理論の現状をまとめた。これらの成果は,国際会議,英文報告,および総説として公表されている。
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