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¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1992: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
ワイドギャップII-VI族化合物半導体を用いたCdZns-ZnS歪量子井戸構造は、CdZnS混晶井戸層の組成比を変化させることにより、そのバンド端を紫外〜青色波長領域まで変化させることが可能な材料である。従って、光半導体デバイス(発光ダイオード、レーザ等)の短波長化を進めていく上で最も有望な材料系の1つであると考えられる。実際、減圧MOCVD法により作製されたCd_xZn_<1-x>S-ZnS歪量子井戸構造を光励起することにより室温において紫外誘導放出光が、観測された。混晶井戸層のCdの組成比がx=0.11,x=0.22,x=0.31の時、各試料において観測された誘導放出光は、357.2nm,374.9nm,390.2nmに位置し、誘導放出に対する励起パワー密度のしきい値は、46kw/cm^2,64kw/cm^2,79kw/cm^2であった。このように、Cd_xZn_<1-x>S-ZnS歪量子井戸構造において観測された紫外誘導放出光は、これまでに半導体量子井戸レーザ材料に関して報告されている中では最短波長に位置づけられる。 このCd_xZn_<1-x>S-ZnS歪量子井戸構造におけるレーザ発振機構に関しては、その光学利得の生成に励起子が関与していることがナノ秒パルスを用いたポンプ-プローブ分光法による光学利得スペクトルの測定結果から明らかにされた。そこで、励起子が関与した光学利得の生成機構について現象論的な解析を行い、その光学利得スペクトルを導出した。これは、励起子の位相空間占有効果の概念を不均一広がりを有する系に拡張したものである。即ち、量子井戸層の膜厚や組成のゆらぎに起因して励起子吸収は不均一な広がりを有し、生成された励起子は、より低エネルギー側の状態に局在化する。そして、その励起子吸収の低エネルギー側は状態密度が小さいために、位相空間占有効果により簡単にブリーチング(吸収飽和)し、そこで光学利得が生成されるとして説明される。このモデル解析と、実験結果(励起子共鳴エネルギー位置に対する誘導放出光の観測されたエネルギー位置の低エネルギーシフト量)との比較的良いい一致がみられた。
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