Research Abstract |
A班に共通な音声資料の収集作業に関しては,第3年度である昨年度に無事その当初計画のすべてをおえた。なお,この中には琉球列島諸方言と日本語方言の形成史上,方言周圏論的な意味から注目される本土の東北北部方言との比較をおこなう目的で,秋田県の角館町の方言音声の収集をくわえた。また,これに関連する特殊なテーマとして,琉球列島諸方言をふくむ日本語圏におけるアイヌイズムの問題をあきらかにするための、秋田県阿仁町のマタギの山ことばの調査,および阿仁町地名についての調査があり,その結果の整理を本年度中におこなった。 いっぽう,当班独自の琉球列島諸方言の諸種の音声資料収集計画として,(1)単語レベル,(2)文レベル,(2)作品レベルという,3種類のことなるレベルのついてのおおくの収集作業が第1年度以降,進行中である。うち,(1)(2)の収集作業は琉球列島各地の方言辞典,語彙週の頃目と例文の音声化がその主なものであり,第3年度までに,(1)「奄美方言分類辞典」,(2)「沖縄今帰仁方言辞典」,(3)「八重山石垣方言辞典(仮称)原稿」などの音声化をほぼおえており,第4年度までに継続しているものに,(4)「沖縄語辞典改定原稿」,(5)「宮古平良方言柴田ノート」ほかがある。ただしこの2者については,音声化作業の前提となる改定や整理の作業がまだおわらない。(1)に関してはほかに,主要な島々の方言の音韻体系を明示するための音節一覧の音声化を前年度につづいて行った。(3)には,歌謡,民話,沖縄芝居,方言ニュースなど,諸種の方言音声資料の組織的収集とテキスト化のおおくの作業がふくまれ,進捗状況に差があるが,いずれも前年度につづき順調に進行している。 収集された音声を資料とする音韻,リズムとアクセント,イントネーションなどに関する実験音声学的,および理論的な研究もひきつづいて進行し,その成果は小さくなく,本年度もそのいくつかが公表された。
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