Research Abstract |
平成4年度は,3年度に完成した外国人日本語学習者のための特殊拍習得支援システムについて,いくつかの学会・国際シンポジウムなどで発表を行うかたわら,日本語学習者に対する試用を行い,その使用状況や発音改善などにつきデータを収集した。また、学習者の使用前後の音声の日本人による聴取・評価実験も行い,以下の知見を得た。 1.コースウエアの評価 試用の過程で,音声波形の観察とマウス操作による細部の聴き比べが,自分の発音の自覚と改善へと繋がることが観察された。本システムは,特に時間的な要素に左右される特殊拍の発音訓練に有効であるが,細かく聞いてくので,音声波形情報からでは読み取れない単音の音価やアクセントの異同などについても,学習者が気付いて改善していく例がまま見受けられ,総合的な発音教育としても有効なシステムであると言える。 2.学習者の自己評価と日本人の評価 学習者の練習1回目の音声と,最後に一応の満足を得た音声,およびその中間に位置する音声をデータとして,日本語母語話者に対して聴取・評価実験と簡単なインタビューを行った。その結果,日本人の評価も学習者の自己評価と概ね一致することがわかったが,次の3点のような興味ある事柄も得られた。 (1)学習者の音声にいくつかの問題がある場合,そのうち一つが改善されても全体評価はあまり変わらない(つまり,上達したとは認定しない)。 (2)発音に慎重になるあまり,スピードが遅くなると日本人評価は低下する。 (3)日本人が発音評価で重視するポイントは,拍感覚の実現,アクセントの習得,個別の単音の習得で,その重要度ランクは人によって異なる。 (4)場面を考え感情をこめた発話を低く評価することがよくある。
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