Research Abstract |
本研究の目的は,第1に工場に関する地理情報をデータベース化(GIS-MA)し,それに基づく分布図を空間的に分析すること、第2に「工業統計メッシュデータ」を利用し,課題1の情報の地域的な意味を問うこと,2つである。本年度は,課題1では地図化のためのシステム開発,分布図の完成と空間的分析を,課題2ではパソコン上で操作可能にするシステムの開発と第1の課題との照応を,それぞれ進めるというものであった。 こうした目的と実施計画を受けて,まず残されていた入力および計測作業を完成させるとともに,地図化のためのシステムの高度化を図り,作業の対象範囲を三大都市圏,地方ブロック,そして全国と広げて分布図を作成し,それぞれのスケールでの空間的分析を行った。後半はこの分析を継続するとともに,「工業統計メッシュデータ」利用のためのシステムの開発と地域分析に集中した。 前者の空間的分析では,まずこれまでの図化に加えて,点情報のメッシュへの転換とそれを使った図化を新たに開発し,分析に応用した。その上で,残されていた繊維・素材の両部門について,首都圏と東日本に加えて,それ以外の二大都市圏と西日本に関する分析をも進めた。これを通じて,大都市圏からの地方分散に都市圏ごとに違いがあること,また西日本の分散が空間展開として東日本とは異なること,などが明らかになった。 後者の「工業統計メッシュデータ」に関する作業では,利用のためのシステム開発に予想以上に時間を費やし,現段階でまだ最終的な分析にまで至っていない。これまでにわかったことについて触れると,大規模工場の存在が地域の工業化や工業構成の変化に与える影響は,大都市圏よりも地方で,あるいは新工業地域でより大きく,工業化の水準が高まるほど与える影響は小さいと言えそうである。
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