メソポタミア・シリア・エジプトの文明の盛衰と環境変動
Project/Area Number |
04212121
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Paleological Association of Japan Inc. |
Principal Investigator |
川西 宏幸 (財)古代学協会, 古代学研究所, 教授 (70132800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
常木 晃 筑波大学歴史人類学系, 講師 (70192648)
泉 拓良 奈良大学文化財学科, 助教授 (30108964)
松本 健 国士館大学イラク古代文化研究所, 助教授 (00103672)
脇田 重雄 古代オリエント博物館, 研究員 (00175069)
屋形 禎亮 信州大学教養部, 教授 (80015388)
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Project Period (FY) |
1992
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1992)
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Budget Amount *help |
¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
Fiscal Year 1992: ¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
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Keywords | 前1200年 / 寒冷化 / 分節化 / ヒッタイト / 鉄 / 海の民 / アッシリア / 末期王朝 |
Research Abstract |
本年度は紀元前1千年前後、考古学的にいえば青銅器時代後期から鉄器時代初期にまたがる時期に焦点を合わせた。この古代史上の転換の様態と原因について7回の研究会を実施し、また公開シンポジウムを開催して成果の一部を公表した。そこで確認されたのは、以下の点である。 メソポタミア・シリア・エジプト史上、前1200-900年という時期は、前代の有力国家が衰滅して次代勢力の興隆をまつ、いわば政治的な空白の300年である。この空白を現出した要因は一元的なものではなく、相乗的であったと考えられる。すなわち、1)新王国時代のエジプトのヒッタイトがシリアの領有をめぐって激しい闘争を繰り返し、その軍事面の荷重が両国を疲弊させたこと。2)「海の民」が前1200年頃に南下し、ヒッタイトを滅亡においやったこと。3)シリア内陸部のアラム人の活動が活発化して、アッシリアが衰退したこと。4)戦いで疲弊したエジプトに、さらに東西から異民族が侵入したこと。つまり、戦乱による疲弊と民族の移動・侵入とが大きな要因であったことが知られる。これと並んで、前1200年頃に気候が寒冷に向かうことが古気候学の方面から指摘され、またナイル河の水位の低下も説かれている。この環境変化が民族移動を促し、農業生産力の低下をもたらせた河能性が高い。 これらの原因によってもたらされた政治的な空白の実態は、分節化した社会であった。そこで、1)鉄器という新しい素材を駆使して農業生産力を高めつつ、2)西方では海上交易や移民によって、ギリシア・ローマ文明の母体となる地中海世界の形成にむかい、3)東方ではアッシリアが回複し、騎馬兵力による強大な軍事力を擁するようになる。これらの動きが重なって、オリエント世界は再び新たな政治統合へと歩み始めたのである。
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Report
(1 results)
Research Products
(18 results)