Research Abstract |
結晶成長理論の原子レベルでの取り扱いは,ほとんどモンテカルロ・シミュレーションか分子動力学あるいは現象論的取り扱いである。 菊池により開発された経路確率法(PPM)は非平衡統計力学の手法であり,近似理論ではあるが,原子レベルでの運動,特に拡散運動を取り扱うことができ,これまで相転移及び輸送現の取り扱いに多くの成果を上げてきた。我々はPPMにより結晶成長理論の解析的取り扱いの開発を行っているが,本年度の成果は次のようようである; 異方性相互作用をもつモデルとしてSi(001)面のSiの成長を調べるため,PPMの対近似を使って,分子線エピタキシー法(MBE)による結晶成長を記述する方程式を導びいた。得られた運動方程式を数値積分し,次の結果を得た。 (1)平担面 RHEED(反射高速電子線回折)強度振動には方向依存性があり,1原子層周期と2原子層周期のものが得られる事を示した。 これは一層毎に変化する異方性によるものである。 (2)微斜面 アニーリング中と結晶成長中における微斜面のAテラスとBテラスの割合の時間変化を調べた。温度が上昇すると層成長モードから,Aステップにおいて二層ステップが形成され,二層ステップ伝ぱんモードに変化することを表面モルフォロジーを計算することにより明らかにした。 以上の結果は,定性的に実験結果をよく説明する。 また同時に行ったモンテカルロ・シミュレーションの結果と定量的にも一致することを示した。
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