Research Abstract |
《I》「KOBEPACK/S」,「KOBEPACK/I」の開発 量子スピン系の理論的研究において,近年大きな役割を果しているのが、数値的アプローツと場の理論的アプローチである.特に低エネルギー励起状態に対して数値的アプローチは有効であり,代表的な数値計算法として,反復法(主としてランチョス法)を用いた数値的対角化があげられる.我々は,この方法を量子スピン系に適用する場合の有効なあるゴリズム(副空間コーディング法)を考案し,2つのプログラムパッケージ「KOBEPACK/S」,「KOBEPACK/I」を開発した.副空間コーディング法を簡単に言えば,系を2つの部分に分割し,(Storage/Lookup Table)の作成に要する計算時間を短くすると共に,行列要素の格納も可能にするアルゴリズムである.これにより,従来不可能であったワークステーション上での大きな量子スピン系の数値的対角化も可能になった.パッケージ【KOBEPACK/S】では,次のハミルトニアンで記述されるspin-S(任意)の量子スピン系を取り扱うことができる。 H=Σ__<(l,l´)>{J^x_<l,l´>(S^x_lS^x_<l´>+S^y_lS^y_<l´>)+J^z_<l,l´>S^z_lS^z_<l´>+K_<l,l´>(S_l・S_<l´>)^2}+Σ__l{D_l(S^z_l)^2-H_lS^z_l} (1) 格子の形,相互作用が及ぶ範囲,境界条件等は,相互作用しているサイト対(l,l´)を適当に与えることによって任意に設定できる.なお,昨年度開発したS=1に対するパッケージ「KOBEPACK/1」については,マニュアルを完成し,本年度1月の研究会で公開した.また,パッケージ【KOBEPACK/I】では,不純物スピン問題を取り扱えるように,(1)のハミルトニアン中の1つのスピンの大きさを,ホストスピンの大きさSと異なる値S´(任意)に変えることができるようにしてある.なお,両パッケージには,サービスルーチンとして,「種々の物理量計算ルーチン」,「対話型メインルーチン」をつけてある. 《III》1次元量子スピン系における端および不純物の効果 1次元量子スピン系に対する不純物bondおよび不純物spinの効果は,旧くから興味を持たれ,多数の理論的・実験的研究がなされてきた.我々は,変分法等の解析的方法と「KOBEPACK」による数値的方法を組み合わせて,1)S=1Heisenberg系に対する不純物bondの効果,2)S=1Heisenberg系に対するS=1/2不純物spinの効果,3)S=1/2Ising-like系に対する不純物bondの効果,4)S=1/2Heisenberg系に対する不純物bondの効果,等を調べた.その結果,S=1Heiseberg系ではHaldane Gap内に不純物状態が出現すること,S=1/2Ising-like系開放端条件下の低エネルギー励起は,ソリトン状励起になること,等の新しい知見が得られた.
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