Research Abstract |
量子光学,光通信や,微細加工技術等,微視的世界から中間的・巨視的領域にまたがる新しい物理現象は、量子・古典の関係を巡り,量子論の基本概念に深く関わる諸問題を提起する.その考察には巨視的・微視的対象間の相互作用の適切な取扱いが不可欠で,無限個の量子を含む巨視系にも適用可能な形で量子論の数学的枠組の拡張が必要となる.従来の形式では,量子と古典をつなぐ通常の対応原理でのh→0の極限操作が,微視的世界の情報を残さない仕方で全系の構造を変えるため,「シュレディンガーの猫」の背理が生じ,整合的な取扱いができない.そこで本研究では,巨視的及び微視的領域の間の自由な移行を可能にするよう,超準解析とBoole値解析の方法に基づき,無限大・無限小を含む広い数体系の中で量子論の統一的な枠組の定式化を試みた.ここでは,《非標準的世界》の中で,無限小の格子間隔をもつ《超有限》格子を相空間とする《超有限》Heisenberg群とそのunitary表現論(超有限調和解析)を用いて,量子論が簡潔に定式化される.単位格子の体積はPlanck定数の羃h^f(f:系の自由度)に比例し,Planckの量子仮説導入の際の素朴な描像が復活すると共に,超準解析における《標準化》の数学的操作において,Planck定数や時間スケールの単位に取り方,格子間隔や自由度の数の適当な選択により,有限自由度系に限らず,無限自由度量子系や古典系も再現可能で,それにより様々な状況の下に量子系と古典系を統合できると期待される.例えば,正準交換関係に対する非可換Parseval等式も,有限群のunitary表現に関する直交関係式に《移行原理》を適用することによって,自然な形で証明される.確率論への超準解析の応用において《超有限》確率空間の概念が演じたのと同様の普遍的研究対象としての役割が,今後,超準解析の量子物理学への応用において,この《超有限》Heisenberg群に対して期待される.
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