Research Abstract |
80年代以来、KP方程式系、戸田格子方程式系などの非線形可積分系に対する代数的及び幾何学的研究が活発に行われ、無限次元Lie代数の表現論、代数幾何学、素粒子物理学等と密接に関係することが明らかになってきた。本研究では、この観点から「無分散KPヒエラルヒー」、「無分散戸田格子ヒエラルヒー」を研究している。 無分散KP方程式は、KP方程式の分散項を落としたものとして定義されていたが、もっと一般に、KP方程式系を定義するLax形式、 ∂tnL=[Bn,L], に於いて、擬微分作用素L,Bnをその全表象で置き換え、交換子[,]をPoisson括弧{,}で置き換えることによって、無分散KP方程式を含む整合的な無限連立偏微分方程式系が得られる。佐藤のKPヒエラルヒーにならってこの系を無分散KPヒエラルヒーと呼び(昨年までは、SDiff(2)ヒエラルヒーと呼んでいたが、無分散ヒエラルヒーという呼び方が一般に定着したのでそれにならった)、KPヒエラルヒーの理論の方法論に沿って系の対称性や解のparametrizationを調べた。これまでに、京都大学の高崎金久氏との共同研究によって、KPヒエラルヒーに整合的にPlanck定数【planck's constant】を導入して【planck's constant】→0の極限(準古典極限)を取れば無分散KPヒエラルヒーが現れること、ω1+∞対称性がKPヒエラルヒーのW1+∞対称性の準古典極限であることを示した。更に、KPヒエラルヒーの波動作用素やτ関係の検古典極限を導入することで、無分散KPヒエラルヒーのτ関係を自由fermionの真空期待値として現すことができた。このような形での無分散KPヒエラルヒーの理解は、2次元重力の行列模型理論の分配関数(これはKPヒエラルヒーのτ関数になる。)の種数展開の0種数部分に無分散KPヒエラルヒーのτ関数が現れることを 無分散戸田格子ヒエラルヒーについても同様のことを示した。この場合はPlanck定数は格子間隔として現れ、検古典極限は格子の連続極限となる。
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