抑制性回路・シナプスにおける長期増強の神経生理学的研究
Project/Area Number |
04246230
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小田 洋一 大阪大学, 基礎工学部, 講師 (00144444)
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Project Period (FY) |
1992
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1992)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1992: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Keywords | 長期増強 / 抑制性シナプス / マウスナー細胞 / 金魚 / 学習 / 工憶 / 慣れ / 逃避反応 |
Research Abstract |
シナプス伝達の長期増強(LTP)は、学習や記憶に限らず脳の回路形成などにも重要な役割を果すと考えられている。しかし、過去の知見はほとんどが興奮性シナプスについてであって、抑制性シナプスでは実験的証拠に極めて乏しかった。本研究は、金魚の延髄にあるマウスナー細胞に至る純粋な抑制性回路を用いて、抑制性シナプスにおける長期増強を明らかにした。マウスナー細胞は金魚の逃避反応をトリガーするニューロンであるが、対側の聴神経(第VIII神経)から抑制性介在ニューロンを介してグリシン作動性抑制性結合を受けている。我々はこの回路を対象にして抑制性LTPを見いだした。聴覚刺激に対応する高周波電気刺激を第VIII神経に与えると、抑制性シナプスコンダクタンス(G_<IPSP>)の増大を伴って抑制性シナプス電位(IPSCP)あるいはシナプス電流(IPSC)1時間以上増大した。LTPはテタヌス刺激を与えた経路に特異的に発現し、コントロールであるマウスナー細胞軸索側枝からの反回性抑制回路によるIPSPは変化しない。この回路には第VIII神経と抑制性介在ニューロン間の興奮性シナプスとマウスナー細胞上の抑制性シナプスが含まれるが、axon cap内やマウスナー細胞内で記録されるシナプス前線維の活動とG_<IPSP>を比較することにより、LTPに伴う抑制性シナプスの伝達効率の上昇が示された。この結果は抑制性介在ニューロンとマウスナー細胞に微小電極を同時に刺入して得られる単シナプス性単位IPSP(unitary IPSP)の解析によって確認された。また、マウスナー細胞内にカルシウムイオン(Ca^<2+>)キレータ(BAPTA)を入れると抑制性シナプスでのLTPは発現しないことから、シナプス後ニューロンのCa^<2+>の必要性が示唆された。このような抑制性LTPは、マウスナー細胞では金魚の逃避反射の慣れまたは運動方向の選択学習に関与する可能性が考えられる。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)