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¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1992: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
大腸菌における蛋白分泌に関連する諸反応と膜酸性リン脂質の関連を,主に酸性リン脂質含量を激減させる変異pgsA3を用いて解析し,以下の成果を得た。 1.pgsA3が,酸性リン脂質合成開始過程を触媒する酵素ホスファチジルグリセロリン酸シンターゼの反応機作に係わる細胞質突出領域のミスセンス変異(Thr→Pro)であることを証明し,解析系の特性を明らかにした。 2.pgsA3変異株で異常となる蛋白分泌系を検索し,前年度見出したTEMβ-ラクタマーゼのペリプラスムへの移行と成熟化の低下を,抗体を導入した分析系でより明確に示した。さらに,主要蛋白OmpC,OmpF及び未同定の52kDa蛋白の外膜含量が顕著に異なることを発見した。OmpCは増加,OmpFは減少,52kDa蛋白はほとんど消失した。この条件でompF及びsecA遺伝子の転写が昂進すること,52kDa蛋白はenvZ欠損株でも消失することなどを示し,蛋白質分泌過程における膜リン脂質組成の重要性を明らかにした。 3.pgsA3変異株での蛋白質分泌異常の分子機序を明らかにするため,細胞機能の変化を解析し,NADHデヒドロゲナーゼ活性の低下,酸素吸収能の低下,Mn-スーパーオキシドディスムターゼの発現増大,RecA及びSulA蛋白に依存するSOS対応の部分発動などを見出した。 酸性リン脂質欠損により,細胞には極めて広範な機能の異常が生じ,その一環として蛋白分泌能の低下が起こることが分かった。これらの因果関係を全て明らかにすることは容易ではないが,この方向の研究の重要性がさらに認識されたと考えられる。
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