Research Abstract |
これまでに、生態型の大きく異なる28品種の種子根伸長速度を調べ、最も大きかったIRAT 109(インド型陸稲)と最も小さかったホウネンワセ(日本型水稲)との間に2倍近い差異を見いだし、さらに他のいくつかの形質(種子根中の中心柱直径、導管直径、1次側根密度、L型側根割合、節根長・数・径など)でもその2品種間で大きな遺伝的変異が存在することを明らかにした。そこで対象を10品種に増やし、各形質の品種間差異を検討した。その結果、それら10品種間でも多くの根系形質において遺伝的変異が大きいことが明らかとなった。次に、根系および地上部各形質間の相関係数を調べたところ、種子根伸長速度と高い正の相関を示した形質は種子根の中心柱直径,各後生導管の総断面積などの水の吸収・輸送に関与していると考えられるものであった。従って、種子根伸長速度を調べることにより、特に耐旱性にとって重要な形質の大きさも推定しうる可能性が示唆された。さらに、主成分分析によって、イネ品種の根系構造は、各根系構成要素および通導系の大きさを表す成分(第1主成分)と各根系構成要素の数を表す成分(第2主成分)によって特徴づけられることが明らかとなった。陸稲と水稲で比較すると、第1主成分では陸稲の方が水稲に比べて全体的に値が大きく、陸稲の方が根系構造から見ても乾燥土壌条件下での生育に有利な根系構造を有していると考えられた。第2主成分では明確な整理はできなかった。また、日本型とインド型で比較すると、第1主成分では明確な整理はできなかったが、第2主成分では日本型および日印交雑品種は軸付近に分布し、インド型は全範囲にわたり分布しており、インド型の方が根系形質の変異が大きいと考えられた。これらの結果から、数多くの根系形質を用いて生態型の異なるイネ品種の根系構造を比較・分類する方法として、主成分分析は有効な方法であると考えられた。
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