Research Abstract |
1985年から89年の5年間に,徳島大学医学部附属病院第二外科で外科的に切除された肺癌54例を対象とし,原発巣の凍結組織標本から凍結切片を採取した.ついでこれからRNAを抽出し,cDNAを作成し,p53遺伝子のコドン101〜300の領域をPCR-SSCP(polymerase chain reaction single strand conformation polymorphism)法により点突然変異の有無を検出した.検出し得たp53遺伝子の構造異常例は対象54例中の27例(50%)である.組織型別にみれば,喫煙と関連が強い扁平上皮癌では14/21(67%),小細胞癌では3/5(60%)に異常を認め,関連が少ない腺癌では7/24(29%)であった.p53遺伝子の異常を認めた症例のうち喫吸歴の聴取が得られた22例のBI(Brinkman Index)の平均は1078,異常を認めない症例のうち吸煙歴の聴取が得られた23例のBIは666であった.また,非喫煙者10例中p53遺伝子に異常を認めたのは1症例のみであった。以上の所見より,p53遺伝子の構造異常と喫煙の関連性が強く示唆される.PCR-SSCP法で異常があった27症例のうち8例に関して塩基配列が決定できた.なお,残りの症例についても今後,塩基配列を決定し,点突然変異の特異なパターンを検討する. われわれの教室で保在し得ている9例のクロム肺癌について,ホルマリン固定パラフィン包理切片よりDNAを抽出し,p53遺伝子のエクソン5からエクソン8に関して,PCR-SSCP法にて解析中である.エクソン7に1例,エクソン8に2例それぞれ構造異常をもつ症例を認めている.ダイレクトシークエンス法にて塩基配列を決定し,クロム肺癌に特異的な点突然変異のパターンが認められるか否かを検討する.
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