Research Abstract |
音楽,音声,騒音など日常生活に存在する音を研究対象とする場合,これは実験の生態学的妥当性を高める上からも,音を短い断片に切断することなく,その流れに沿って印象をとらえることが望ましい。われわれのグループは,このように変化する音の1次元の印象を量的に連続的にとらえる方法として,1977年にカテゴリー連続判断法を,1987年に継時ME法を,また,多次元の時々刻々の印象を連続的にとらえる方法として1989年に連続記述選択法を提案した。今年度はこれらの方法を確立するために,(1)連続記述選択法に用いる形容詞とその数の検討(2)被験者の臨界識別速度と反応の追随能力の関係の検討,(3)反応時間の推定法の検討,(4)継時ME法における線分の長さと変化速度の検討を行った。(1)については,予備実験で対象とする音の印象を自由記述する,あるいは与えられたリストの中から選択するなどの方法で得た結果をクラスター分析し,クラスターを代表する形容詞を選ぶという方法が適当であることが確認できた。この結果は日本音響学会誌に投稿し,現在印刷中である。(2),(3)については,すべてコンピュータでコントロールできるシステムを完成し,予備実験を終えた。連続した刺激の中でも,反応時間が異なる場合もあり,今後,種々の変化パタンを含む刺激を用いて詳細に検討する予定である。(4)に関しても,刺激の速い変化にも追従できるコンピュータソフトを開発し,予備実験を実施し,刺激の微細な変化にも,大きな変化にも,被験者の印象に対応して敏感に反応できることを確認した。今年度開発したシステムを用いて,今後系統的に実験を行い,聴覚における時系列的情報処理のモデルと手続きを確立させる予定である。
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