Project/Area Number |
04610113
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
社会学(含社会福祉関係)
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
船橋 惠子 桜美林大学, 国際学部, 専任講師 (60229101)
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Project Period (FY) |
1992
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1992)
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Budget Amount *help |
¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1992: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Keywords | 産育のコスト / 家族給付 / 保育・就学前教育 / 自由な市場のサーヴィス / 企業福祉 / 個人単位の産育保障制度 / 産育世界の価値 / ケアジェンダー |
Research Abstract |
出生率低下は、先進産業社会に共通の基本動向であるが、その具体的な要因を検討してみるとじつに多様であり、産育保障ひとつで上下するものではないことがわかった。しかし、家計と女性個人に担われている産育のコスト(経費、心身の労力、機会費用)をいかに社会的に再配分していくかということは、どの社会にとっても重要な課題となっている。多くのヨーロッパ諸国では、1970年代80年代をつうじて行政主導の産育保障と家族政策・雇用政策を展開してきた。特に、フランスの家族給付と保育・就学前教育は、世界的にユニークで優れた制度として評価できる。他方、アメリカ合衆国では、産育は私的な問題と規定され、自由な市場のサーヴィスと企業福祉の発展に任されてきた。そして、熟練した女性労働力の確保が企業戦略の上で重要な課題になるにつれて、大企業が従業員の家族サポート制度を模索し始めている。日本では、どちらかと言えばアメリカに近い形で企業福祉を中心に、しかも家族内部の女性の献身に大きく依存しながら、産育を営んできた。だが、日本でも年齢別女性就労率のM字型曲線が解消へと向かう傾向を見せ始め、個人としての生きがいを大切にする男女が増えていくにつれて、従来の産育システムでは不十分になっていく。ヨーロッパの個人単位の産育保障制度やアメリカの企業戦略、さらに産育ネットワーク運動などは、今後の日本社会に示唆をを与えるものだ。 さらに、出産の医療化と施設化の行き過ぎに対して、人間的な出産のあり方を求め、伝統的な助産婦職を復権させようとする動きが、日・仏・米のいずれにも見られた。産業社会の価値(緊張・統御・達成)に対する産育世界の価値(リラックス・受容・待機)の再評価、子ども支援的な育児と教育、産育の担い手を支えるカウンセリング、ケアジェンダーの問い直しなどが、先進諸社会に共通の現代的な課題であることが見えてきた。
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