Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 1992: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
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Research Abstract |
インドにおける社会活動訴訟は,それまでの司法審査対議会主権論の対決状況から脱却した1980年代初頭に成立を見る。転換をもたらした要因としては次の5点を指摘できる。(1)非常事態期に出した人身保護令状事件・被拘禁者事件の最高裁判決にもかかわらず,司法審査権を骨抜きにされた司法部が,別の戦線を選択する必要性に迫られていたこと。(2)革新的判事の最高裁入りにより,裁判官主導型の訴訟指揮が可能となったこと。(3)国産法学の提唱・法律扶助運動の展開が進んでいたこと。(4)判例により,憲法21条の生命・人身の自由が実質的にデュープロセス条項化されていたこと。(5)社会活動グループとプレスの協力関係が成立していたことがそれである。 社会活動訴訟は,当初は主に,刑務所・警察留置場内の問題,警察のあり方,保護施設の状況,労働者の諸問題が争われた。また社会的弱者層に係わる領域として,部族民・女性・指定カースト・路上生活者・スラムの住民・街頭商人・農民・年金生活者・児童福祉に関するものがある。最近では,環境問題・消費者の権利,統治機構のあり方を問題にした裁判所の改革・政治家の法的責任追求の手段としての活用などが論議されている。 社会活動訴訟の特質としては次の4点を指摘できる。(1)原告適格の緩和化により,公益スタンディングが成立していること。(2)対審的手続きの否定と非対審的手続きの採用が見られること。(3)当事者の協同的・共働的努力の必要性が強調されていること。(4)国家政策の指導原則と基本権観念を総合させた,「基本的人権概念」が成立・発展していること。 インドにおける社会活動訴訟は,「公衆と支配的集団の権力の病理」に対して人々の注意を喚起してきたという評価が一般に妥当する。
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