Research Abstract |
環東(シナ)海経済圏とは,地理的には北九州-沖縄-台湾-香港・珠海-上海浦東-山東・遼寧-朝鮮半島西岸をカバーする経済圏であり,沖縄と環黄海経済圏-上海浦東開発区-華南経済圏を結ぶ軸の広がりをもち,経済的補完関係が期待される経済圏である。この経済圏の特徴は,協定等によって制度化された経済圏ではなく,市場メカニズムによってそれぞれが結び付いた市場動因型経済圏であることである。この経済圏は,中国の局地経済圏のダイナミズムを動因として,経済発展のポテンシャリティを顕在化させつつあるが,外資依存型経済発展のもつ経済的・政治的・社会的不安定性を内包している。 地域間及び国際間で相互に補完・触発しながら交流・発展する多極分散型の国土形成という国土計画の基本目標に沿った沖縄・九州地方の地域経済発展戦略のコアは,環東(シナ)海経済圏における経済圏リンケージ効果を高めていくことである。それは,ヒト・カネ・モノ・情報が交流することによって高まる。環東(シナ)海経済圏を中心とした東アジアにおける国際貿易・金融・情報センター形成のために,沖縄・九州地方は学術・技術・情報交流センターや総合物流センターやオフショアセンター等の機能を十分に分担することが可能である。また,国内では沖縄にのみ制度化されている自由貿易地域制度(FTZ)や通商産業省の推進するフォーリン・アクセス・ゾーン(FAZ)の効果的な運用を図ることは,沖縄・九州地方の有効な地域経済発展戦略となるにとどまらず,同地方が国際マクロ的な経済調整に貢献することにもつながり,地方が国際分業の一翼を担う具体的実践となり得る。
|