研究課題は「地方金融機関の預貯金構造」で滋賀県の地方銀行、貯蓄銀行、信託会社を対象とするはずであったが、第二次採択となり、かつ本年度に限定されたため、計画のうちすぐ可能な対象として近江信託会社の金銭信託に取り組んだ。 具体的には金銭信託帳簿から取引データ(証書番号、委託者名、職業、居住地、委託日、満期日、解約日、委託金額、解約金額など)を全部パソコンにインプットした。かなりの分量になるので、パソコンにより集計、分類するが、昨秋に採択内示があってから着手したので、今やっとインプットが終わった段階にある。これから分析にはいるが、地方銀行の定期預金と異なり、委託金額は概して大口で、委託期間が継続を繰り返して極めて長期に及んでいることが証明可能である。また、委託者には地方の有力資産家はもちろんいるが、近江信託の親銀行というべき百三十三銀行、八幡銀行が超大口委託者として金銭信託集積に力を貸し、地元の多くの信用組合も大口の委託者になっている。これまで金銭信託の具体的内容は全く解明されていなかったから、興味深い結論が出そうである。 わが国の定期預金、金銭信託は巨額の投資性資金を集積して、銀行あるいは信託会社の最大の資金源泉を形成しているが、実際には前述のように継続が繰り返されており、通説をはるかに超える長期資金であったことが筆者の研究により実証されつつある。資金所有者の性格、またいかなる投資対象を選択するのか、選択要因が何か(期間、利率、安全性)それを地方金融機関の帳簿から実証しようとするのが本研究である。すでに八幡銀行の定期預金は分析済みであり、今回の近江信託の金銭信託が加わわれば長期資金はとりあえず展望でき、さらに当座、普通預金、貯蓄貯金を引き続いて分析したい。
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