Research Abstract |
n次元複素ユークリッド空間C^n内の有界領域Dの境界aDが,ある種の条件をみたすとき,Dの正則自己同型群Aut(D)の構造によりDを特徴付けることが本年の目標であったが,結果的には中ばこの目標は達成されたと言ってよい.すなわち,今任意の正の実数P_1,‥,P_sに対して,C^n内の有界ラインハルト領域E=E(n_1,‥,n_s;P_1,‥,P_s)を次のように定義しよう:E={(Z_1,‥,Z_s)〓C^<n_1>X…XC^<n_s>|||Z_1||^<2P_1>+…+||Z_s||^<2P_s><1}.ただし,各n_iは自然数でn_1+…+n_s=nとする.また,||・||はユークリッドのノルムとする.このとき,次のことがわかる:定理 DをC_n内の有界領域,χεaD、〓^^〜εaEとし,次の2つの条件(1)(2)が満されたと仮定する:(1) 点χ,χ^^〜の近傍Q,Q^^〜と双正則写像Γ:Q→Q^^〜でΓ(χ)=χ^^〜,Γ(D〓Q)=E〓Q^^〜となるものが存在する.(2) 点bεD,b^^〜εEと列{〓_ν}CAut(D),{〓^^〜_ν}CAut(E)が存在して〓_ν(b)→χ,〓^^〜_ν(b^^〜)→χ^^〜となる.このとき,結論として,DはEと双正則同値となる.この定理から,Aut(D)がノンコンパクトである有界領域Dが,ある種の条件をみたす境界点PεaDを許容するならば,Dの大域的な構造は,点Pのまわりでの局所的な構造から完全に決定されることがわかり,大変興味深い.また,上記の定理の証明方法により,小林昭七氏の意味での双曲型多様体のあるクラスの構造を解明することが出来ることを付記しておく.なお,上記の結果を出すにあたり,Aut(D)の構造の研究に関しては,主に,古田,藤本,一瀬の各教授があたり,またDの正則自己同型写像の境界挙動については,主に解析学的見地から,松村,泊の両助教授が研究し,研究代表者の児玉がこれらの研究の総括にあたった.
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