Research Abstract |
遷移元素,希土類元素原子を含む強磁性体の電子状態と,内殻X線吸収で期待される磁気円二色性(MCDと略す)の関係を理論的に調べた.以下に具体的内容を記す. 1)強磁性Niの2p内殻励起共鳴光電子放出. 以前2p→3dX線吸収MCDの実験に対する3d配置間相互作用の観点に立つ解析から,Niの3d配置として,3d^<10>,3d^9,3d^8をそれぞれ約20%,60%,20%の割合で重ねあわせた状態を提案した.この研究では,同じ観点に立ち,Niの3d軌道のまわりの軌道の混成を取り入れた模型に基づき,期待される2p内殻しきい値近傍の円偏光による共鳴3d光電子放出におけるMCDを予言し,これが上記のNiの電子状態についての描像を確認する有力な方法である事を示した.さらに,同じ模型に基づき,Niの2p内殻・3d外殻光電子放出,3p内殻励起スピン分解型共鳴光電子放出の実験を説明した. 2)CeRh_3B_2のCe4d内殻光電子放出の直線二色性. 六方対称の結晶構造を持つ標記の物質の,一軸異方的なCe4f電子の占有とCe3d内殻励起共鳴4d光電子放出線二色性の関係を,1)と類似の模型に基づき明かにした. 3)相対論的バンド構造計算による強磁性遷移金属合金. 第一原理的なバンド構造計算法であるKKR法と不規則系を取り扱うCPA法を併用し,Fe-Co,Co-Pt合金に対し,局所密度汎関数法により相対論的バンド計算を行い構成原子のスピン・軌道両磁気モーメントを求めた.これに基づき,構成原子の内殻X線吸収のMCDを調べた.
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