Research Abstract |
水和電子および水和金属イオンは、化学や生物化学の諸現象において反応中心または活性中心として重要な役割を果していることが知られており、その水和過程は活発な研究対象となっている。しかし、ダイナミックスも含めた水和過程の分子レベルでの理解はまだ充分でなく、今後の重要な研究課題となってきている。本研究では、分子線中に生成した電子、金属イオンの水和クラスターをモでルとして、光解離法によるクラスターの電子構造および反応性の検討および,赤外レーザーを用いた多光子共鳴赤外分光法によりクラスターの幾何構造を検討することにより,水和機構を分子レベルで詳細に調べることを目的としている.ここでは,レーザー蒸発法を用いてMg^+とAl^+イオンを核とした水和クラスターを生成し.光解離法を用いて電子スペクトルと反応性を検討した.特に,Mg^+(H_20)^nについてはn=5までの電子スペクトルが得られ,理論計算との比較により水和構造と段階的水和に伴う電子構造の変化が明らかになった.また,これらのクラスターは光励起によりMgOH^+(H_2O)_<n-1>を生成することが新たに見いだされ,n>5ではMg^+(H_2O)_nより後者の生成物の方が熱力学的に安定になることが明らかになった. 一方,上記のクラスターの幾何構造と水和水の結合の情報を得るために,多光子共鳴法を用いた高感度赤外分光実験の計画を進めている.現在,この装置の核となる高出力赤外レーザーを試作している.ここではNd:YAGを用いたパラメトリック発振(LiNbO_3結晶)を採用し,短キャビティの発振器を製作して発振性能の基礎的検討を進めている.今後,この装置と現在の質量分析器を組み合わせて上記のクラスターの2〜4μm領域での赤外スペクトルの測定を行い,金属イオンと水和水の相互作用を詳細に検討する予定である.また上記のクラスターの光解離実験の結果と比較検討し,金属イオンの水和のダイナミックスを明らかにして行く.
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