Research Abstract |
環境変動による生息場所の悪条件を克服するために動物(個体)も植物(種子)も移動分散したり(空間的回避)、休眠したり(時間的回避)する。分散と休眠をどのように使い分けているかは、生物種によってあるいは同一種であっても地域固体群間に大きな差がある。このような差は、異なる環境条件の下で各個体が繁殖成功を最大にしようと努力した結果として解釈できる。これまでの数理モデルにおいては多数の等質なパッチが連続する場合が仮定されてきた。ここにおいては環境が不均質なパッチで構成されている場合を解析する。また分散率、休眠率をそれぞれ独立に決めるのではなく、進化的に安定な戦略(Evolutionarily Stable Strategy以下ESS)の手法によって同時に決定する。まず第一段階として、環境が質のよいパッチと悪いパッチの二つからなり、時間的に質が変動しないような簡単な場合を解析し、既に発表している(Researches on Population Eology,34:77-90,1992)。本年はパッチの質が時間的に変動しする場合をシュミレーション実験で解析した。更にそこにおいては分散率、休眼率を個体が決定する際、a.何も予測できないとき、b.局所的な個体数密度を知りうるとき、c.環境の変化を予め知りうるときについて詳しく調べた。植物では1年草の種子について、動物ではマダラテントウ虫群について比較的まとまったデータがそろっているので、上の数理モデルで得られた結果を応用して数理モデルの正しさを検討し、論文としてまとめる予定である。
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