Research Project
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
本研究では、東南アジアを中心に入手した液浸標本および乾燥標本に基づいて、ヌスビトハギ属および近縁属のDendrolobium属とPhyllodium属における花序形態の比較研究を行った。実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて、花序における苞葉および花の配列パターンと発生パターンを観察し比較検討を行った。その結果、以下のことが明らかになった。1.ヌスビトハギ属の花序は茎の先端部に形成され、花序軸にらせん状に配列した鱗片状の苞葉の腋に側生花序をつくる。花は側生する花序の軸の背軸側に偏ってつく。2.Dendrolobium属では花序は普通葉の腋に生じる。花は花序軸にらせん状に配列する種と、花序軸の背軸側に偏ってつく種とがある。3.Phyllodium属では花序軸は頂小葉が退化し特殊化した葉の腋に生じる。いずれの種も、花は花序軸の背軸側に偏って配列する。花が軸の背軸側に偏って配列するという性質が3つの属に共通してみられたことから、ヌスビトハギ属の側生花序はDendrolobium属やPhyllodium属で普通葉あるいは退化した葉の腋に生じる花序と相同であることが明らかとなった。したがって、Dendrolobium属やPhyllodium属の花序を抱く葉が鱗片葉へと大きく退化することによってヌスビトハギ属の偽総状花序が生じたと考えられる。また、らせん配列を残しているDendrolobium属は最も原始的であることが明らかとなった。今後、Phyllodium属とヌスビトハギ属の花序を詳しく比較することにより、ヌスビトハギ属の花序形態の進化傾向を推定することが可能となった。これにより、ヌスビトハギ属の亜属や節の系統関係を探る手がかりが得られるものと期待できる。
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