Research Abstract |
今年度の調査の主眼は,噴火の過程で,どのような噴火様式の時にアグルチネートが形成されるのかを明らかにすることであった。そのため野外において降下火砕積物,火砕流堆積物,あるいは溶岩との関連を正確に把握することに努めた。調査の方法としては,山麓のテフラと山頂付近の“アグルチネート"との正確な対比を行うことであった。より正確な対比を行うために,最も新しい噴出物を主な調査の対象とした。調査したフィールドは主に九州地域の火山であったが,その他にも浅間山と伊豆単成火山群の調査も行った。またそれと平行して,従来公表された文献をもとに,アグルチネートのデータベース化をすすめた。 野外調査で明らかになった第1の点は,アグルチネートのみを生ずる噴火はなく,大半は火砕流を伴っていることである〈例:霧島火山の韓国岳,丈浪池,新燃岳,御鉢,桜島火山の北岳,歴史時代の大噴火の堆積物など)。第2の点は,スコリア岳等の単成火山においては,溶結現象がほとんど認められないことである(例:伊豆単成火山群;阿蘇米窪スコリア岳)。これらの事実はマグマの噴出率,堆積速度などが,アグリチネートの形成と密接な成因関係にあることを示唆している。すなわちマグマの噴出率が適度に大きく,かつ火砕流噴火のように噴煙柱の高度が高くないことが,アグルチネートを形成する必要条件のように思われる。野外での実証が必要となる重要な問題といえる。 なお今回はアグルチネートの強溶結部と溶岩との識別に関しては,調査区域内に適当なサンプルがなかったため行われていない。今後三宅島あるいは伊豆大島など最近の事例をより詳細に調査検討する必要がある。またデータベース作成の過程で,アグルチネートと溶岩の識別については誤認が多いことが推定された。今後の調査で判明するかもしれない誤認例については,適宜修正していく予定である。
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