Research Abstract |
オフィオライトは造山帯に露出する地質時代の海洋性地殻の断片であり、地球のテクトニクスを解明するための重要な研究対象である。今年度の8月に京都で開催された第29回万国地質学会議で、私は他の2人とともにオフィオライト・シンポジウムを組織し、会議の前後に日本のオフィオライトを紹介する2つの地質見学旅行を案内して、各国の研究者との交流を深めた(文献1,2)。シンポジウムでは30件の発表が行われ、そのうち15編の論文原稿が集まったので、現在は論文集を編集している。 これらの論文の査読を進める中で、環太平洋多重オフィオライト帯に関する多くの新事実を知ったが、特にロシア極東地域のオフィオライトは構造地質学的にも岩石学的にも日本のものとよく類似することがわかった。即ち、この地域のオフィオライトは日本のものと同様にジュラ〜白亜紀の付加帯に衝上するナップ構造をなし、狭い地域に地質時代や岩石学的性質の異なるオフィオライトが混在する。このことは、1990年のコリヤーク山地での3週間の調査で私が観察したことと一致する。 今年度はこの調査で持ち帰った岩石の薄片観察および全岩と各造岩鉱物の化学分析を行い、非常に岩石学的多様性に富むことがわかった。即ち、この地域のオフィオライトのカンラン岩は肥沃なレールゾライトから涸渇したハルツバージャイトにわたり、火成沈積岩はトロクトライト質のものから、ノーライト質のものまで変化に富む。また、岩体全体が著しい塑性変形を被ったダナイトや、全体が変成作用を受けて角閃岩化した斑レイ岩体もある。この研究結果の詳細は近く公表する。 また、シンポジウムと見学旅行に参加したウラジオストックの研究者との交流の結果、日本の夜久野オフィオライトと同様にモホ面付近がスピネルカンラン岩相に属する比較的厚い海洋性殻の断面がシホテアリンに分布することがわかり、急遽この4月に調査に行くことになった。
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