Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1992: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
学習能の発達は他の諸行動の発達過程と同様に、おそらく臨界期に該当するものが存在し、漸進的にではなく、段階的な発達を遂げるのではあるまいか。もしそうならばそれはいつ頃発現するのか。こうした疑問を明らかにするために誕生直後,若令,成年に至るさまざまな年令段階におけるニホンザル(Macaca fuscata)を対象として同一条件下で逆転弁別課題(Rambaugh970)を用いて課題遂行の成績を比較した。被験体は1歳群5頭,2歳群6頭,3歳群5頭,5歳群5頭そして7歳以上の成体群5頭である。実験手続きは、被験体に視覚刺激による弁別課題を矯正法で一定の獲得基準まで学習させた後、その逆転課題を非矯正法で10試行のみ課し、その成績を測定することにした。逆転前の獲得基準は67%と80%の2段階とした。まず獲得基準67%で逆転課題を最低10問題行った。その後基準を80%にしてやはり最低10問の逆転課題を課した。各試行はすべてパーソナルコンピュータによって自動制御され、正反応の場合は食物によって強化された。結果は、獲得基準67%レベルでは1,2,3歳群よりも5歳群および成体群ですぐれた成績がみられた。すなわち比較的威長発達の順に従っている。しかし獲得基準80%レベルでは1〜3歳群まで成績が上昇するが、その後5才と成体で下降傾向がみられた。この事実は、学習能の発達に不可欠の要素である可塑性能力の発達が、少なくとも3歳までにある頂点が存在することを示唆している。他方、自然死した0歳,1歳,2歳,3歳および成体のニホンザル58頭の大脳皮質各葉の表面積,中心溝,シルビウス溝,弓状溝,月状溝などの長さをそれぞれ3次元ディジタイザで計測し、その成長を詳細に検討した結果、0歳より2歳までの間に著しい大脳皮質の発達を遂げることがわかった。この形態学的事実は学習行動の発達に関する実験結果を支持するものとして興味深い。
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