本研究は、太陽光強度の揺らぎや蛍光灯光の変動成分を信号として、受動的に距離計測を行うための基礎的研究である。ビデオカメラ上で物体の明るさ変動を観測し、光源の揺らぎ成分との相関計算を精密に行えば、二次元画像各点の距離情報を一挙に獲得できることになるが、サンプリング間隔以下の微小時間差の決定が必要である。計算上は、大量の観測データによりnsオーダに相当する距離測定が期待できるが、現実の対象では、信号の帯域幅や、光源以外の変動要因、空間相関度、サンプリング時間長等の現実的制約が大きい。そこで、これらの影響を調べるため、イメージディセクタを利用したランダムアクセスカメラにより、従来より広帯域の測定系で現実的対象の揺らぎ成分の観測を行った。 太陽光を大本の光源とする物体の輝度変化の観測では、1Hz以下でほぼ1/f特性を示し、それ以上の周波数ではフラットなノイズ特性を示した。高周波域でフラットなのは、カメラが蓄積効果を持たないので、光のランダムパルス的性質が現われたものと考えられる。したがって、相互相関の計算には、強度の大きい低周波成分を有効利用する必要がある。一方、蛍光灯を光源とした観測では、周期成分が充分にあるため、相関度は高く、カメラ視野上でずらした点間の相関もあり、距離と相関度の関係を求めることができた。ただし、光源サイズと物体の散乱特性の影響も考える必要があった。 今後、揺らぎ成分の空間特性と光源の統計モデル、初期の段階で有効な情報を抽出する方法について検討する必要がある。
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